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□彼女のわがまま
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「きょ、恭一郎さん…私が、嫌いになった…?」
しゃくりあげながら問われる。
普段、本音をなかなか言わない。
真山の言うことに従い、
「私のこと、好き?」などといった
真山が最も嫌う女の鬱陶しい台詞は吐かない彼女が。
こぼす言葉だけに胸がぎゅっと締め付けられる。
(彼女は、こんなにも俺を必要としている。
それなのに俺は…。)
結婚という煩わしさから自分が逃げていただけではないか。
ーー名前の幸せを本気で考えるのならば。
泣きじゃくる名前の姿に。
漸くではあるが、真山は覚悟を決めた。