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□実習生
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「いらっしゃい。珍しいお客さま、だね?
…どうしたの、かな?」

保健室へ入ると、養護教諭の若桜郁人が艶やかな微笑みで迎えてくれた。

「あの…ちょっと熱っぽくて…。解熱剤、もらえませんか?」

若桜は心配そうにこちらを見遣ると、名前へ体温計を手渡した。

「君は…数学の実習生、だよ…ね?
どう?教育実習。楽しんでる?」
「え…あ、そうですね。やっぱり、大学生相手の模擬授業と本物の生徒相手に行う授業とでは全然違って勉強になりますね。」
「そう…。名前先生は、随分真面目、なんだ…ね?」

突然ファーストネームで呼ばれて驚いた。
まぁ、実習生はIDカードの様な首下げ式名札を着けているから名前がわかるのは理解できるのだけど。

「真山先生は…優しくしてくれる?」

意外なところからその名前が出てきたことにどきりとする。
そんな名前の表情から、
若桜は恐らく名前自身もはっきりとは意識していない真山への淡い感情を察した。

「ええ…厳しいけれど、優しいですよ。」
「へぇ…真山先生がね。」
「仲良いんですか?」
「うん。大学からの同期。
あいつは…やめといたほうが、いいか…な?」

そこ意味がわからずに、きょとんとしていると。 
若桜はクスりと微笑む。

検温終了の合図が鳴った体温計を受けとる。

「あいつに泣かされた女の子、何人も見てきたから…お勧めは、できない…な。
俺なら…女の子を、とろっとろに甘やかしてあげるんだけど…ね?」

体温計のデジタル表示の数字を見て
眉間にシワを寄せると、真面目な養護教諭の顔をして名前に向かう。

「38.5度。高熱じゃない。
…解熱剤あげるけど、ここで休んでいくこと。いいね?」

「えっ…あの、数学準備室にベッドあるからそちらで寝ようと思ってるんですけど…」

それに、指導教官の真山からあそこにいるように言われている。
それも付け加えて、どうにか薬だけ貰うよう若桜に懇願する。

「だーめ。君は病人なんだから、保健室の先生の言うことを聞きなさい。」

そのまま抱き上げられると

「ちょっと…あの、若桜先生!?」

お姫様抱っこで運ばれベッドに横たわらされた。

上靴を若桜に脱がされるとそのまま布団をかけられる。

「ねぇ…添い寝して、いい?」

一瞬、何の事だかわからずにぽかんとしてしまった。

「へっ…?い、いや。ダメです。
止めてください。」

若桜はその反応を楽しむと、クスクス笑って

「ふふ…つれないね?
じゃあ…おやすみ。」

カーテンを閉めた。

(やっぱりソファーベッドより、普通のベッドの方が気持ちよく眠れるな…。)

真山のいいつけなどすっかり忘れて、名前は眠りに落ちた。
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