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□実習生
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「名前先生、すごい寝汗。
ちょっと…動かない、で?」

朦朧とする意識の中で、するりとブラウスを脱がされているのだけがわかる。

「ん…気持ちいい…。」

丁度、人肌くらいに暖められた蒸しタオルを直接素肌に当てられると心地よい。

うなじを。首筋を。背中を。
暖かいタオルでそっと撫でられると
とても心地よくて。
徐々に意識がはっきりしてきた。

(ん…?ちょっと待って…??ここ、保健室…だよね?えっ?…若桜先生!?)

「ちょ、ちょっと、若桜先生!!??何してるんですか?!」

何が起こっているのか良くわからないけれど。
ブラウスを脱がされて、上半身がむき出しになっているこの状態はただ事ではない。

「寝汗すごくて、ブラウスびっしょり…だよ?
ほら、黙って俺に身を任せて?
ここ…一番汗溜まりやすいから。」

そういいながら淡々とブラを外すので

「若桜先生っ!!止めてくださいっ!!」

被っていた布団を引っ張りあげ必死に胸元を隠す。

若桜は残念そうに、
「うん。君が嫌がるなら、これ以上はしない。
…残念だなぁ。」

とだけ言うと、そっと名前のおでこに手を当てる。

「熱は…少し下がったみたい…だね?
どうする?もう少しここで横になる?」

思いっきり首を横に降る。

(嫌だ!これ以上ここにいたら
何されるかわからない。
それに…若桜先生は、どうして平気な顔で…こんなことができるの?
普通、男の人って女の裸見たらこんな平然としてなくない??
本当に医療行為だったの?
…でも、やっぱり心臓に悪い!!)

「そっか…残念、だね?」

名前の内心など想像もつかない若桜が残念そうに笑う。

「その必要はない。」 

戸口から、このところ毎日のように聞いている
張りのある低い声がした。

「なんだ、真山先生。どうしたの?」

こんな時でも動じない若桜に
ある種の畏れと尊敬を感じながら。

若桜を無視して、名前を睨み付ける真山に怯えた。

「準備室で休んでろと言ったはずだ。
こんなところで何をしている。」

普段の柔らかい中にも何か張りつめたものを感じる真山の物言いとはまるで違う彼に驚きを隠せない。

「す、すみませんっ。解熱剤を…」

慌てる名前から、顔をほんのりと赤らめた真山が目をそらす。

「言い訳は後だ。まず服を着ろ。
俺はカーテンの外側に出てる。
早くしろ。」

「…!!はいっ!!」

(真山先生にこんな格好を見られたんだ…恥ずかしいし、絶対誤解されてる。どうしよう!)

胸の鼓動が激しくて。
真山に知られてしまった事への動揺と、
彼の言いつけを守らなかった事への後悔…それに対する彼からの反応が恐くて。
ボタンを留める指が震えて、普段通りに着ることができない。

漸く、ブラウスをきてベッドから降りることができた。

眉間にシワを寄せ、腕を組み、目を伏せて立っている真山はとても近寄りがたく
名前は身を震わせる。

対して、若桜は笑顔で

「じゃあ、名前先生。
続きはまた、ね?」

名前に向けて手をヒラヒラと振った。

真山は忌々しげに若桜を見遣る。
対して若桜は真山に向かい挑発的な笑みを向けた。

苛立った真山は名前を従え
保健室を出ると、そのドアをぴしゃりと閉ざす。

「次は空きだから午後の授業の打ち合わせをします。」
「は、はい。」

名前には目もくれず。
淡々と業務連絡だけを口にすると、
二人は言葉を交わすことなく数学準備室へと向かった。
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