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□実習生
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保健室での一件などなかったかのように普段通りに授業の打ち合わせをする。

次の授業を行う2-Dの進度の確認と
今日するべき授業内容。
具体的な進め方の計画について、
簡潔かつ的確な真山のアドバイスは
わかりやすくてとても心地良かった。

「そうですね。では、次の時間はこれで行きましょう。」

「ありがとうございます。」

真山からの及第点がもらえたことにほっとする。

机の上に広げてある資料を手元にあるファイルに片付けていると
不意に真山から声をかけられた。

「ところで…体調はどうですか?」

暗に先程のことを聞かれた気がして
名前の肩がびくりと大きく揺れる。
それを見逃す真山ではない。

「何故俺の言うことに従わなかった。
理由くらいは聞いてやってもいい。」

がらりと口調が変わる。
名前の知る真山がオンタイムの真山ならば
今、この強権的な口調が本来の彼なんだろう…。
今まで憧れていた彼は本当の真山先生じゃなかったんだ、という軽い失望と。
彼の核心に少しだけ迫れたんだという興奮とで気持ちがざわめく。

「寒気が止まらなくて…それで、薬をもらいに…」
「薬だけのつもりが何であんなことになったんだ。若桜に唆されたか。」

核心をつかれてびくりとした名前を見れば、
言葉を聞くよりも明らかだ。
真山は大きくため息を漏らした。

「気になって…途中で自習にして戻ってきたらおまえがいなかった。
保健室と口にしていたからまさかとは思ったが…」

真山はぐっと苦虫を噛み潰したように口元を歪めた。
その悩ましげな顔に名前の胸がずきりと痛む。

「おまえの指導教官は誰なんだ?」

真山の瞳に見つめられると反らすことができない。

「真山先生、です…。」

真山は呆れてため息をつくと

「ならば何故俺に従わない。
おまえの指導教官である限り
俺はこの学園におけるおまえの安全には責任を持つつもりでいる。
俺に背かれたら…場合によっては手の打ちようがなくなる。」

苦し気に言葉を紡ぐ真山に。
心がきゅうっと痛み、不謹慎にも胸が高鳴る。

(真山先生…そんなに私の事を考えてくれていたんだ…。)
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