text

□守部くんとクリスマス
3ページ/5ページ

「えっ…?これ、私に…?」

突然の事に、名前は戸惑いを隠せない。

「ええ。以前、僕のお弁当を誉めてくれてレシピを聞いてきましたよね?
それで…その、レシピ本です。
クリスマスに苗字さんも西園寺先輩のパーティーに来ると聞いたのでプレゼントに。
良かったら、受け取ってください。」

頬を染めながら、普段ははっきり喋る守部には珍しくぼそぼそと呟く。
理由がわかった名前は、好きな料理の本を貰えたのが嬉しくて。

「わぁ!守部くんのお弁当、いつも美味しそうだもんね。ありがとう!」

守部の心を捉えて離さない満面の笑みを浮かべたので、守部はほっと胸を撫で下ろした。

それも、束の間。

「あっ…でも、私、西園寺先輩へのプレゼントで頭が一杯で守部くんに何も用意してないや…。」

と、しょんぼりとその笑顔が消えてしまった。

「いえ、僕が好きでしてることですから!
それに、君と、その…料理の話ができるのは、とても嬉しいんです…。」

「でも、私、守部くんに何もしてないよ…?
なんか、私だけもらってばかりじゃ悪いよ!」

名前のこの言葉にぐっときた。
与えられてばかりで、さらに自ら何かしてもらうのを要求するのではない。
ギブアンドテイクで、きちんと相手にも返そうとするその生真面目さも
守部が名前に好意を寄せる理由の1つだからだ。

しかし、今日はもう時間も遅い。
できるならデートを申し込んで、また彼女と二人の時間を楽しみたい。
とはいえ、女子に不馴れな守部としては彼女が満足できる…西園寺先輩たちのような、デートをこなす自信もなかった。

(…どうしよう。本当は何もいらないと言いたいけれど
ここで、何もいらない、というのは
逆に彼女の好意を踏みにじることにもなるから慎重に考えないと…)

その時、守部にひとつ考えが浮かんだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ