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□真山先生と初詣
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「す、すみませんっ!今年こそは頑張ります。」
慌てていうと、真山はくすりと微笑んでから苦笑う。
「お前…3年のコース選択はどうするんだ?
文系進学コースに行くと数学はなかったはずじゃないのか?」
名前は驚いた顔をして真山の顔を見たが。
「えっ!?そうなんですか?
…じゃあ、3学期は頑張らないといけませんね。」
そう言ってにっこりと微笑む。
(本当に、素直で、明るくて、前向きで…)
大人になるにつれて、無くしていったものを、こいつは未だに持っていてーーその眩しさが、真山にはとても微笑ましいもののように思えてならない。
だからだろう…つい、名前を気にかけてしまう。
行きとは違う、人通りがまばらな参道を抜けると
駅が近づいてきた。
「お前は、どっちだ?」
「私は、こっち方面の電車です。」
寂しげに微笑む真山は
「そうだったな…俺とは、逆だ。」
とだけ言うと、この日はほとんど繋いだままだった手を名残惜しそうに離す。
(私、今日は…ずっと真山先生と手を繋いで…!
何だか、デートみたい。
今さら、恥ずかしくなってきちゃった!)
急に頬を染める名前に、
真山は怪訝な顔をすると。
目の前に白い小さな袋を差し出した。
「これは、お前にやろう。
学問のお守りだ。少しは勉強に励むんだな。」
真山とずっと手を繋いでいた事実に今さらながらに頭がいっぱいになっていた名前は突然の贈り物に戸惑い、驚きを隠せない。
「えっ!?これ、私に、ですか?
うわぁ、かわいい!
先生、ありがとうございます。」
満面の笑顔で礼を言った名前の頭を、真山は軽く撫でる。
「赤点などとったら承知しないからな。」
チクリと言いながらも、その表情はとても穏やかだった。
(end )
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