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□妨げられた補習
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昼休みに逢坂と別れたあとの5時間目。
終ったばかりの数学の中間テストが返却されている。

友人の一人が頬を染めて戻ってきた。
聞けば、
「真山先生が、『良くやりましたね。期末もこの調子で頑張るように。』だって!頑張って良かった〜!」
とのことらしい。

「あんた、ほんっとーに真山好きだよね?」
「うん。真山先生、イケメンだしすっごいクールなのにちゃんと生徒を見ててくれるからいいよね。」

頬を赤らめうっとりとしている友人に、隣の席から茶々が入る。

「私は一ノ瀬派だから…。
嫌じゃん、真山怖いもん。
ほら、名前。呼ばれてるよ?」
「えっ…!?あ、行ってくる。」
「「行ってらっしゃ〜い!」」
友人たちに見送られながら、とぼとぼと教壇に向かう。

(うう…嫌だなぁ。数学、苦手だし、今回すごく難しかったんだよなぁ…。)

びくびくしながら教壇に立つ真山を見つめると
彼は目を伏せて、溜め息をつきながら囁く。

「お前はどうやったらこんな点が取れるんだ?
放課後、残れ。進路指導室で俺が個人的に補習をしてやる。」

補習、という言葉に驚き思わず聞き返してしまった。

「えっ…!?そんなにひどいんですか!?」

真山は眉間にシワを寄せ、溜め息をつく。

「…どこまでお気楽なんだ。
ひどいなんてものではない。
このままでは進級すら危ういぞ?」

真山の言葉があまりにも衝撃的で。
言葉が、出ない。

「わかったな?」

念を押す真山に、頷くだけ頷いて。
項垂れながら席へと戻った。

友人たちと遊ぶ約束があったのだが
これでは無理だ。
先程、補習を言い渡された事を告げると。

「ええっ!?真山先生が補習してくれるの?!いいな〜!」
「いや、真山の補習で喜ぶのはあんただけでしょう。名前、無理なら日を改めようか?」
「ううん…二人に悪いから、いいよ。」
「私が代わってあげたいくらいだけどしょうがないよね。」
「本当に災難だね。頑張って?」
「うん…。」

友人たちと話していたら、解説授業が始まったので前に向き直って教壇の真山に視線を移す。

(ああ…嫌だなぁ。二人きり、なんて。
逃げ場ないじゃない。)

ふう、と溜め息をついて重たい気持ちを抱えて放課後を迎えた。
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