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□妨げられた補習
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進路指導室へ向かうと、すでに真山が補習の支度を終えていた。

「逃げなかったな。よし、始めるぞ。」
「は、はいっ。よろしくお願いします。」

放課後に真山と二人きりで
大嫌いな数学の補習をされることに緊張が走る。

ただでさえ、ぴりっとした緊張感が漂う真山だ。
こんなに間近で、しかも他に誰もいないなんて…。

それに、心なしか先生の態度がいつもと違って…それも緊張する理由の1つなのかも知れない。

緊張する。

(友達がいつも真山先生かっこいい、って言ってるけど…。
近くで見ると、やっぱりすごくかっこいいし、なんかいい匂いがする…。
香水かな?大人の男の人って感じだなぁ…。)

普段は何とも思っていない「真山先生」が
急に「男」に感じられて。
先生を「男の人」として意識してしまうと。
そのネクタイを緩める仕草さえも艶やかに感じられて、名前は思わずどきりとする。

(やだ…私、すごく真山先生にドキドキしてる。「先生」なのに。)

邪な考えを振り払うように、慌てて用意されたプリントをめくると
紙で指を切ってしまった。

「いたっ…!」
「大丈夫か?」

すかさず真山に手をとられ、ほんのりと血が滲む指をじっと観察される。

「えっ…あの、真山、先生…?」
「紙がすれて指を切ると場合によっては深くなることもあるからな。」

真山は、その指にすっと絆創膏を巻く。

「これで大丈夫だ。
…今日はここにあるプリントの問題を全て片付けてもらう。
お前だけの特別扱いだ。感謝しろ。」

「は、はい!頑張ります!」

緊張しながらも、前向きに頑張ろうとする名前に真山は眉ひとつ動かさず淡々と指示をした。

「よし、じゃあ取りかかれ。
終わるまで、おまえを帰すつもりはない。」
「えっ?!」
「早く、帰りたければさっさと終わらせろ。
無論…ずっと俺の側にいたいと言うなら、考えんでもないがな。」

(よし、頑張って早く帰るぞ!)

名前は真山の声に頷くと問題に取りかかった。
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