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□妨げられた補習
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「先生、できました。」

どうにか出された問題を解き終えて、目の前の真山に見せる。
彼は、表情を変えずにそれを受け取り
一瞥すると、眉間にシワを寄せた。

「おい、どうやったらこんな答えが出るんだ。」

そう言うと、それまで机の向こうにいた真山が名前のすぐ隣の椅子に腰掛ける。

「えっ…?ちゃんと計算したんですけど…。先生、ちょっと近すぎないですか?」

隣の席に腰かけた真山は横の席から名前の席でプリントを広げる。
計算が間違っていた事への不安と
その距離の近さに名前は狼狽えた。

「どうやったらこうなるのか、俺に説明して見せろ。
…場合によっては、とっておきのお仕置きを考えなければならんな。」

名前が狼狽えているのを知った上でニヤリと笑う。
普段、教壇からはお目にかかれない初めて知る真山の顔にぞくりと肌が粟立つのを感じた。

(そんな…!お仕置きだなんて!!
真山先生って、こんなキャラだったの?!…こわいっ!!)

「えっと…この二次方程式のx座標とy座標が出てるから…ここに、それを入れると…」

名前が説明を始めると、口元をひきつらせた。
真山の表情を見て、不安にかられる。

(あれ?何が違うんだろう??)

「…おい、その座標を入れたグラフをこの余白に書いてみろ。」
「あ、はい。」

言われた通りに書こうとするも、
すぐ側にいる真山にドキドキしてしまってなかなか思う通りに書けない。

「…どうした?そんなに身体を震わせて。一体、何を考えていた?」

真山に指摘されると恥ずかしさが増して慌ててしまう。

「えっ…!?あのっ…」

「どうした…?わからないから書けないのか?
それとも…何を想像していた?」

普段、みんなの前での真山とは違う
艶やかな視線、艶かしい声に。
その大人の色気を含んだ真山に図星をさされてしまったことに。
思わず、顔が熱くなってきた。

恥ずかしさのあまり、俯くと
頬に手をかけられ、上を向かせられる。

「どうした…?答えられないのか?」

(ううっ…ま、真山先生が近いっ!心臓に悪いっ!!)

「えっ…あの…。」

しどろもどろになっていたところで

「あっ、真山先生に名前さん!?
…えっ?!二人とも、あの…」

一ノ瀬が進路指導室のドアを開けるなり二人の睦まじい様を見て
赤面しながら慌てていた。
それに気がついた真山は軽く舌打ちすると名前から距離をとり

「一ノ瀬先生…入るときはノックくらいしろ。
だいたい、何をそんなに慌てている。
だからいつまでたってもお前は甘いんだ。」

ふう、と溜め息をついた。

「い、いえっ、すみません。
まさか、進路指導室でそんな…!」

狼狽える一ノ瀬に、真山は問いかけた。

「で、2年の担任が、進路指導室に何の用だ?」
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