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□1月29日
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誰もいない冬の科学室はどこか寒くて。
着ている上着を脱ぐことができずにいた。

「今、暖房入れたんですけど
暖まるのに時間がかかるので…
不自由をおかけしてすみません。」

申し訳なさそうに白川は言うと、
名前を座るように促した。

「白川くん、誕生日でしょう?
いいよ、私が淹れるから。」

名前が座る前に白川へと声をかける。

「いいえ…僕が貴女を誘ったんですから。貴女は…そこで座っていてください。
すぐ、準備が終わりますから。」

そう、申し訳なさそうに微笑むと
彼は科学準備室の方へと消えていく。
手持ちぶさたになったのでiphoneをいじっていたところ、
白川が何やら実験道具らしきものを目の前でセットしていた。

(あれ…?コーヒーって言ってなかったっけ…?)

名前が目をぱちくりさせて驚いているのを、白川は微笑ましく穏やかに見つめる。
彼は、アルコールランプの上に金網を。
そして、その上にフラスコをセットすると
慣れた手つきでそれに火を入れた。

「えっ…!?もしかして…。」

彼は控えめに微笑んだ。

「ええ…科学室にはポットがないので…。
二人分ならこれで充分なんです。」

アルコールランプで熱せられたフラスコの中の水が。
徐々に温まって、ブクブクと音を立てて沸騰した。

その様子がーーきっと、白川と二人きりだからなのだろう。
何だか特別なものの様に思えて。
名前はわくわくしてくる。

沸騰したお湯の入ったフラスコを。
白川は火傷しないようミトンでつかんで
コーヒーフィルターと粉をセットした漏斗へ注ぐ。
すると、フィルターの中でふわりと一旦白い泡を立てたコーヒーが。
透明な漏斗をゆっくりと伝ってビーカーへ流れ落ちて行く。

まるで、実験のようにコーヒーを淹れる白川の手つきを。
名前は何か目新しいものを見るように胸をふくらませて眺めていた。

「はい…できました。
こんなものしかありませんが…良かったら、どうぞ?」

ビーカーに入ったコーヒーを受けとる。

「ありがとう!何かすごく新鮮だった!理科の実験みたいでわくわくしちゃった。」
 
興奮が覚めやらない様子の名前を白川は満足げに見つめた。

「そんな…照れますね。
貴女が、喜んでくれて…良かった。」

いつもの穏やかな微笑みを見せる白川へ微笑み返す。

「さっき準備室でケーキを切って来ました。良かったら、一緒にどうぞ。」
「えっ…?じゃあ、お言葉に甘えて。」
「「いただきます。」」

二人は声を揃えて手を合わせると、
ティータイムを楽しんだ。

(End )

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

白川くんのお誕生日SSです。
間に合って良かった(;つД`)

こんなヤマなしオチなし、
いちゃいちゃもないお話を最後まで読んでくださって
本当にありがとうございましたm(__)m。
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