text

□2日遅れのバースデー
4ページ/5ページ

(ふう…やっと部活終わった…。
資料…作らないと…。)

慌ただしい1日に振り回され、
部活を終えると漸く事務作業に取りかかれる。

月曜日から残業とか本当に嫌すぎる。
そう思ったところで仕事があるんだから仕方がない。

ため息をつくと、背後から声をかけられる。

「おい、明日の資料、まだ終わらんのか?」
「えっ?あ、はい、すみません。」

反射的に謝ってから
おそるおそる後ろを振り向くと
腕組みをした真山がこちらを見下ろしている。

(でも、これ明日の放課後までだから今怒られることじゃないよね…?)

目をぱちぱち瞬かせながら彼を見上げると
真山はふう、と
ため息をつき目を伏せた。

「一ノ瀬が、学年会議の資料が終わらんとおまえから泣きつかれたと言っていた。
…2年の担任相手に、おまえは何を考えているんだ。」

(ちょっと学くん、真山先生に何てことを!!)

思わず冷や汗が出る。

「えっ…あの…それは…。」
「何故俺に言わない?」
「だって…ええと…その…真山先生に負担はかけられないじゃないですか…。」
「おまえ、『ほうれんそう』もわからんのか?」
「いや、そういう訳じゃ…」

しどろもどろになっていると、真山が名前のパソコンのモニターを覗きこむ。

(止めて!こんなに近づかれたら心臓に悪いじゃない!!)

「ほう…?だいぶ形にはなっているようだな?
ここまでできていたらそんなに騒ぎ立てる程ではないだろう?」

定時は過ぎ、人がまばらにはなっている職員室で
耳元で囁かれるとドキドキしてしまって…。

ーー私がこんなにもときめいていることに、真山先生は気がついているのだろうか?

「貸せ。特別に俺が手伝ってやる。」
「えっ!?だ、大丈夫です!
後は…「わかってる、ここの訂正だけだ。」」
言葉を遮られると、もう何も言い返せない。

間近で見る、キーボードを叩く長い指に胸が高鳴る。
ふと、横を向くと、真剣にモニターに向き合う端正な顔があって。

(どうしよう…こんな近くに真山先生がいるなんて…。)

ドキドキしてしまって、身動きさえとれない。

真山の声で我に返った。

「おい、できたぞ。」
「あ、はい。…ありがとうございます!助かりました。」
「礼など要らん。他の学年の奴に泣きつくな。3年のチームワークがなってないと思われる。」
「うっ…すみません。」

ふう、とため息をつかれる。

「おい、この後は?」
「いえ、特にもう仕事は…。」
「もう遅い。飯食い行くぞ。」
「はあ…。学くんも、声かけますか?」
「何だ、一ノ瀬がいないと不満か?」
「へっ…?」

(真山先生と二人でごはん…?)

名前がきょとんとしてると、呆れてため息をつかれる。

「今日、2年は学年会議だ。嫌ならいい。」
「いえっ…!嫌じゃないです!
あ、でも、私そんなに飲めないので…「それくらい知っている。」」

遮られると、驚いて真山を見つめた。

「おい、行くぞ?」
「あ、はい!」

コートを羽織って帰り支度を始める真山を夢見心地で見つめながら。

(よし!…これなら、プレゼント渡せる!)

彼への初めての贈り物を忘れないよう、
自分の荷物をまとめはじめた。

(End )

最後まで読んでくださったかたありがとうございます!
後書きは次ページにて。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ