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□サクラサク
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「そ、そうなんですね。」

…会話が、うまく続かない。

元々人と喋るのはあまり得意ではない。
それでも、彼女はボクの話をにこにこ笑って聞いてくれる。

初めは、アニメのキャラに似ているからすごく気になった。

でも、今はーー

(ボクが名前と一緒にいられるのは、これが最後になるんでしょうね。)

かといって、連絡先を交換したり次の約束をする勇気は。

ボクには、ない。

「先輩…?」

つい物思いに耽ってしまっていたら、名前は心配そうに芹澤の顔を覗きこんできた。 

「わわわっ!どうしましたか?」

距離の近さに慌ててのけぞると、逆に彼女が照れてしまった。そんな仕草も可愛らしい。 

「あの、先輩…。
よかったら、桜が咲いたら私とお花見しませんか?」

「へっ!?」

予想外の展開に間の抜けた声を出してしまった事を、芹澤は恥じた。

「えっ?あの…ボクと、お花見ですか?!
そんなさらっと誘えるなんて、やっぱりリア充!」

「うーん…よくわからないけど。
こうして芹澤先輩と仲良くなれたのに卒業してそれっきりなんて寂しいですし…。
それに、合格のお祝いもしたいので、先輩が良かったら、ですけど…。」
「行きます!お花見、しましょう!!」

がっつり食いついた芹澤に。
名前は満面の笑みで応える。

「良かった〜!じゃあ、LINE 教えてもらってもいいですか?」
「あ、はい。喜んで!」

二人はお互いのスマホを付き合わせて連絡先を交換した。

「じゃあ、先輩。お花見、しましょうね?はい、指切り。」

そういって、差し出された名前の小指に。
芹澤は恐る恐る指を絡める。

もう、きっと会えることは叶わない。
…そう思っていた。

けれども、キミはボクに次の約束をくれた。

それだけで、もう十分だ。

芹澤は、絡めた小指から伝わる名前の暖かさを感じながら。

次の約束をもらえた幸せを噛み締めた。

(end )

最後まで読んでくださったかた、ありがとうございます!
後書きは次ページにて。興味のあるかたのみどうぞ(*´∀`)
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