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□とある昼下がりの保健室ver.若桜
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「最近、すごく先生との距離を感じるんです。」
「ん?どうしたの?俺は別にいつもと変わらないよ?」
「前はもっと…こう、何て言うのか、ぐいぐいこられてた感じがしてたんですけど…
最近は先生がどこか遠くなったと言うか…。」

ここは藤城学園の保健室。
養護教諭・若桜郁人は、一人の女生徒に詰め寄られていた。

「ふふ。気のせいでしょ?俺は特に…」

若桜の言葉を彼女は遮る。

「私、先生のことが本気で好きなんです!
なのに、どうして…。」

悲痛な叫びと共に、彼女は涙をぽろぽろと溢した。

「女性には優しく」が信条の若桜だが、
その気がないのにここで優しくする方が
より残酷だと言うことも痛いほど良く知っている。 

「今は結婚を前提にしている大切な女性(ひと)がいてね。
教師と生徒だから、って事実以上に君の気持ちには応えられないんだ?」

穏やかに優しくーしかし、はっきりと
彼女を拒絶した。

刹那ー
不意に、彼女に口付けられる。

若桜は口腔内への進入は許さず
抱き締めもせず。
ただ、それを受け止めた。

しばらく経って、漸く彼女は若桜から口唇を離す。

「もっと自分を大切にしないと。
こんな事をされても、俺の気持ちは変わらないよ?」

彼女は、泣き崩れた。
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