text

□夏休みの憂鬱
1ページ/5ページ

その姿を初めて見た時には、すでに恋に落ちていた。

苗字名前の受験した藤城学園入試で監督をしていた男性ーー背が高くて、真っ直ぐな髪をした、メガネの似合う凛とした立姿をしていた彼にときめいた。

入試という、甘い感情を抱くのは不謹慎な場ではあったが、
今までこんな格好いい先生がいたか?
目の前のイケメン監督に心を持っていかれそうになった名前は
うっとりと監督を眺めたいのをこらえて、彼にまた会いたい一心で目の前の入試問題に取り組んだ。

結果は合格。
その4月に藤城学園に入学した。
あの、試験監督の彼は入学式にはいたものの名前の担任にはならなかった。

(まぁ、そんなに上手くはいかないよね。)

しかし、幸運にも数Tの授業はあの格好いい先生が担当になった。

先生の名は、真山恭一郎。
その凛とした姿に違わぬ厳しさで生徒からは遠巻きにはされてはいたものの、その威厳や生徒たちからの信頼は絶大だった。

「真山先生に近づきたい」「真山先生に褒めて欲しい」
その感情の赴くがままに、
苦手ではあったが数学ーー真山が担当ではない数学Aも含めて、はすごく頑張った。
わからないところがあれば、これ幸いと休み時間や放課後に相談に行き、
真山担当の長期休み中の補習は
全ての参加可能な講習に参加した。

元々の得意科目は社会と古典なので
ウィークポイントの1つである数学の点が伸びれば成績は上々だった。
まぁ、苦手とはいっても公立高校の入試問題レベルでどうにか8割取れる程度ではあったのだが。
それでもコンスタントに8割は軽く超える点が取れるのは、真山のおかげだった。

覚えもめでたく、丁寧な口調の真山が二人だけになったときーーそんなことは滅多にないのだが、は
名前を呼び捨てにしたり、名前に対して敬語ではなくなってきたり…と、少しずつではあるが確実に距離が縮まってきているのを感じていた。

名前が2年に進級すると、
真山は3年進学理系クラスの担任になり
名前の数学も別の者が担当することになったので
真山との接点は、そこで途絶えた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ