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□聞こえる、星がぼくらを呼んでいる。
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注意!:夢主≠公式ヒロイン。悲恋。 
夢主→白川くん→公式ヒロイン
という報われないお話です。

私より一段高い所から
満天の星空を仰ぎ見る貴方は。
光の速さで何万年という途方もない距離から降り注ぐ神秘的な光と。
夜の漆黒の闇に吸い込まれてしまいそうで。

貴方を失いたくない一心で
思わず、その腕を掴んだ。

「わっ…!苗字さんっ。
どっ、どうしましたか?」

突然名前に腕を掴まれた白川基は
驚いて名前を振り返った。

(しまった。
「白川くんが星空に吸い込まれそうで嫌だったから」
とか言えない!!)

「あっ、ううん。ちょっと…
転びそうになっちゃって。」

本音を溢すわけにはいかず、
回転が鈍い頭を咄嗟に動かして
見え透いた言い訳をした名前。

「ここ、ちょっと段差がありましたね…。
すみません。懐中電灯、消してしまっていて。」
「ううん、こちらこそ、ごめんね?」
「いえっ…!あの、よ、良かったら…僕の腕に掴まっててください。」

白川が掴みやすいように出してくれた腕に
名前は、そっと自分の腕を絡めた。
その、さりげない優しさに心を打たれ
堪らずに白川への想いが口から溢れる。

「ありがとう。
白川くん、優しいね。」

「えっ!?…あ、あのっ。
あ、ありがとうございます。」
「ふふっ。ここ、すごく星が良く見えるね?」
「ええ…。『星降る里』と呼ばれてるだけのことはありますね。」

そう言って、前を見れば。
少し離れた所からこちらに向かってくる人影が徐々にはっきりしてくる。
その姿を認識した刹那、
白川が顔を強ばらせたのを名前は見逃さなかった。

「鷺坂くん。」
「白川、名前。
おまえたちも、星を見に来たのか?」
「うん。鷺坂くんと彼女さんも?」
「うん。こいつに満天の星を見せたいと思って。」
「ふふっ、さすが藤城ベストカップルだね?」

名前の言葉に鷺坂の彼女は
鷺坂の方を仰ぎ見て恥ずかしげにはにかんだ。
女から見てもうっとりしてしまう、可愛らしいその笑顔は反則だーー

このカップルの邪魔をするほど野暮ではない。
それに…。

「じゃあ、鷺坂くん。またね?」

名前は白川の手を引いて
その場を離れて宿舎の方へ戻ることにした。
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