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□[もしもOL]芹澤悠吏
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会議室へ入ると先に一ノ瀬部長がいたので挨拶を交わすと
思わず問いただしてしまった。

「すみません。これは一体何の集まりなんでしょう?
馴染みのない顔ばかりで少し緊張するんですが。」

嫌味の1つも言いたいのを堪えて
それでも、言いたいことは伝えると
優しい部長はふわりと微笑んで

「ごめんね、苗字さん。
昨日君が帰った後、マネージャー会議で
急に決まったことだから連絡が遅くなってしまったね?

この会議はーー」

「みなさん、おはようございます。」

部長の言葉を遮るようなタイミングでこの部屋に入ってきた男は。
その華やかな立ち振舞いと凛としている圧倒的な存在感とでその場に居る者の視線を一斉に集めた。

(あれが西園寺主任か!)

あのルックスに、ただ事ではない存在感。
ヘッドハンティングされるほど仕事ができるとなれば女性社員が黙っていないのも頷ける。

この会議唯一の女性参加者である名前がほうっ…と感嘆の溜め息をつくと
周りから冷やかされるような笑いが起こり、
会議は和やかにスタートした。

会議が始まってから数分経っての事。

会議室のドアが勢いよく開いた。

「お、遅れて申し訳ありませんっ!!あのっ…けっ経理部のシステムが、エ、エラーを起こしてしまって、あわわわわっ。
決して、寝坊だとか遅刻だとかそんな理由ではないからでしてっ…!」

長めの髪を無造作に結わいて、メガネをかけた男性社員が慌てて飛び込んできた。

西園寺主任は、ふっと笑みを向けると
「芹澤さん、どうぞ。
経理部のシステムエラーの件は私も存じております。
あなたが対応をしていたということもね?」

芹澤さん、と呼ばれた社員は
ほっとした様子で、それでも控え目に自分の席へと向かった。

(西園寺主任、すごい情報収集力。
芹澤さんって、何者…??話の内容からしてシステム部かな?)

それにしても。
藤城食品では、割ときちんとしている男性が多い。
対して、「芹澤さん」はスーツはきちんと着ているものの
男性社員が長めの髪を無造作に結わいているのが
不思議でしょうがなかった。

それでいて清潔感があり
メガネの似合う整った顔立ちは
きちんとした格好をすれば
相当なイケメンだろうな…と思いながら
ちらりと芹澤を盗み見た。

(まぁ、システム部は変わり者が多いって言うしね…)

今まであまり関わったことのないタイプの「芹澤さん」が気になる名前。

「在庫管理の新システム構築を芹澤さんに。
その試用を苗字さんにお願いします。」

(はあ!?新システムとか聞いてないっ!)

心の声は出さずに、返事をする。
「はい。」

「で、新システムについてですが…」
「あ、あの…もう、出来てるので
あとはテスト運用の段階、です。はい…。」

(うそっ!?何それ!?芹澤さんてそんなに仕事出来るの!?
それともこのプロジェクトを知らないの私だけ!?
しかも、何でこんな月初の一番忙しい日にそんな話を持ってくるの?)

目を丸くして驚いている名前に部長が助け船を出してくれた。

「今日は各工場からの棚卸しデータが上がってくる日なので、新システムのテスト運用は後日開始にしてもらえませんか?」

部長の言葉に、
「でしたら、今週末から始めましょうか。」
西園寺は微笑むと、それから会議は続行した。

意外にも、必要な話を淡々として
普段ならありえない短時間で会議は終了した。

終了と同時に、挨拶だけして
「芹澤さん」は会議室を飛び出していった。

(うーん…不思議な人だな…。)

名前は会議室を後にすると、
そのまま自分のデスクへもどって
月1回のハードワークに向け気合いを入れてから仕事に取りかかった。
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