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□[10年後のカレ]白川基
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2年生の進路指導面談が近づいてきていたある日の放課後。
苗字名前は図書館の職業関連書籍コーナーで溜め息をついていた。

(どうしよう…将来のこととかあんまり考えたこと、なかったな。)

様々な職業ガイドブックや進路案内の本でも読んで、とりあえずどんな道があるのかだけでも調べてみよう。
そして、自分の希望が見つかればーー
そんな思いで図書館まで足を運んだのだが
こんなに沢山の本があるとどれを選んでよいのか判らず、途方にくれていた。

「あっ…苗字さん?こ、こんにちは。」

声をかけられた主を確認しようと振り向くと
D組の白川基が穏やかに微笑んでいる。

「白川くん。こんにちは。今日は…やっぱり、科学の本を借りにきたの?」

白川は少し気まずそうに微笑むと
重そうに、はにかみながら口を開く

「いえ…今日は…進路指導の面接があるので自分の方向性を見定めたくてこのコーナーに来たんです。
苗字さんは…どうしてここに?」

「私も一緒。まだ何をしたいのかさっぱり決めてなくて。それでここに来たの。」

自分と同じ理由で名前がここにいる。
そんな偶然に不思議な連帯感を感じた白川はふわりと優しい笑みを浮かべた。

「僕と同じ、ですね。」

その笑みにつられて名前も微笑む。

「私、白川くんは科学や実験が好きでそっち方面へ進むものだと思ってたから、進路に迷うのがちょっと意外だったけど…私と同じで何だか安心したなぁ。」

「ええ、そうなんですよ。
僕は科学全般が好きなので…特定の分野に絞りきれないでいるんです。
薬の研究をするなら医学部か薬学部になりますし、応用化学科で有機化合物の研究もしてみたい気持ちもあれば、化学の基礎研究を追求していきたい気持ちもあって…。
僕…優柔不断ですよね?」

顔を赤らめて伏し目がちに呟く白川。

(悩んでるレベルが全然違うんですけど…!!)

「あんまり偉そうなことは言えないけど…。
うーん…でも、そこまで考えているならあとは…気持ち次第かなあ?
ほら、こないだ穂高くんに頼まれて土壌調査をしてたときに『自分の実験が他の人の役に立ってうれしい』っていってなかったっけ?そういうのは??」

名前の言葉にはっとした顔を浮かべた白川。

「そうですね…例えば…」

白川は自分の未来に思いを馳せたーー
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