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□[ウェディング]守部匡治
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「ただいま。」
「あ、お帰りなさい…!」

守部匡治が数ヵ月ぶりに定時で仕事を終え帰宅すると、名前がリビングの方からぱたぱたと走ってきた。

「名前さん、廊下は走ってはいけませんよ?」
「うん、ごめんなさい。今日は早かったのね?」

そう言いながら、名前は守部から鞄と上着を受け取ると
クローゼットへ片付けようとする。

「あ、いいですよ。自分でしますから。」
「ううん?たまには奥さんらしいこと、させて?」
「えっ…ああ…じゃあ、お言葉に甘えて…」

どうもまだ彼女に手を焼いてもらうことに慣れない。
元より、手を焼かれるより自分が体を動かした方が早いと思っているたちだ。
それでも、自分に尽くしてくれようとする彼女の気持ちが嬉しくて
つい甘えてしまいたくなる。

(僕が、誰かに甘えたいと思うなんて…)

仕事の都合もありなかなか早い時間に帰宅することが難しい。
平日は甘い新婚生活を満喫することが叶わないまま、ずるずると半年がすぎていた。

今日はどうにか仕事を調整して早く帰ってくることができた。

「匡治くん、ごはんできてるけどどうする?
お風呂、先にする?」
「じゃあ、先にごはんをいただきましょうか。」
「うん。そうしよう!今日はね…」

名前の笑顔は、高校生の時から変わらない。
あの時高嶺の花だった名前が、今はこうして僕の隣に妻として微笑んでいる。
…その事実が、今でも時として信じられないことがある。

これは、長い夢で。
眠りから覚めたら君が消えてしまうのではないか、と。
時折、理由もなくそんな不安に襲われる。
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