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□彼女のわがまま
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「この部屋の鍵を、返してもらおうか?」

ーー聡明な名前なら、この言葉の真の意味を理解できるはずだ。

真山恭一郎は、そう言うと名前へ右手を差し出した。

察しの良い名前は、その言葉の意味を察知したらしく目を見開いて驚いた顔をしたものの、
物分かりの良い彼女らしくバッグの中から真山の部屋の鍵の付いたキーケースを取り出した。

「ごめん、ちょっと待っててね?
外すのに時間がかかりそう。」

初めて二人で過ごした名前の誕生日に、
真山が自分の部屋の鍵を付けて贈ったキーケースを未だに大事に使っている。
それ故に、キーをかけるところが少々固くなっているようだった。

(あれから、何年だ…?もう、そんなに経つのか。)

名前が、キーケースから鍵を外すのに四苦八苦しているうちに
彼女との日々を反芻していた。
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