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□実習生
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やっと。教育実習で。
初めて実際の高校生を目の前にして行った授業が終わった。

藤城学園にて教育実習中の苗字名前は、
その達成感とずっと抱えていた緊張感から解放された安堵とで大きく溜め息をついた。

「初めての授業にしては上出来ですね。」

数学準備室へと戻る廊下で
指導教官の真山恭一郎がふっと微笑みかける。

(うわぁ…真山先生、かっこいいなぁ。
笑顔も素敵なんだ。)

真山に微笑みかけられると、
どうにもときめいてしまって心臓に悪い。

思わず俯きがちになってしまったところで
数学準備室へとたどり着いた。

ドアを閉めたところで、真山が名前の顔を覗きこんだ。

「顔が…赤いですね。
熱でもあるんじゃないですか?」

「えっ…?」

(いや、それはこんなに近くにいる真山先生がかっこよくて…)

しどろもどろになっていると、大きな手が額に伸びてくる。

(真山先生の手が、おでこに…!
ひんやりして気持ちいい。)

初めての授業が終った緊張感から解き放たれ、
どうやら気が緩んで発熱したらしい。

「熱があるようですね。
この状態で私のクラスの教壇に立たせるわけにはいきません。
準備室のソファーベッドで休んでなさい。」
「えっ…?保健室、ではなくて、ですか?」

真山は神妙に頷く。

「あそこは、女性一人では危ないです。」
「保健室が、危ない…?」

その意味を掴みかねて考えを巡らそうとしても頭が回らない。
やはり、真山が言うように熱があるのだろう。

真山は意味ありげに頷くと

「気がかりですが…私は次の授業に入ります。その間ここで横になってなさい。いいですね?」

「はい…あの、薬…は…?」

名前が言い終わる前に、すでに真山の姿はここになかった。

(うーん…寒気が止まらない…風邪かなぁ。
やっぱり、保健室行って、薬もらってこよう…。)

真山の忠告を聞かず、保健室へと向かった。
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