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□真山先生と初詣
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新年が始まった。
それは、かわることのない普遍的な時間の流れの一部分でしかないのに
「新年」という言葉の響きと。
年末年始の慌ただしさと周りのテンションの高さに、やはりわくわくさせられる。

1月も始まって三が日が過ぎた4日。
家族で田舎にあるおばあちゃんちから帰ってきた翌日。
苗字名前は、学問の神様が祀られていると言われている
この神社最寄りの駅で待ち合わせをしている。

いつも何かしらのアクシデントがあり
遅刻することが多かったが
今日は珍しく待ち合わせの5分前には着きそうだ。

あの人が来るのを待つのもいいかな?
と、思いながら駅の改札の外にある待ち合わせ場所に向かうと、
既に彼の姿はそこに在った。

「先生、お待たせしました。
…あけまして、おめでとうございます!」

名前は慌てて駆け寄り待ち人に向かい声をかける。
彼は、スマートフォンから目を離し
時計を確認すると
改めて声をかけられた方に向き直った。

普段のスーツ姿ではない、
黒のトレンチコートにグレーのマフラー。
中にはざっくりとしたシルエットのニットを着込み細身のパンツを合わせている
見慣れない私服姿の彼にどきりとする。

(真山先生は大人の男って感じでかっこいいなぁ…。
私、子供っぽすぎないかな?
先生の隣を歩いても、おかしくないかな…。)

「新年おめでとう。
どうやら、今年最初の約束は守れたようだな。」

名前の不安は他所に。
にやりとした笑顔と突き放した口調はやはり彼そのもので、ほっとする。
学校以外の場所で、しかも冬休みに。
「先生」である、真山恭一郎と待ち合わせをして
二人きりで初詣に行こうとしているのがくすぐったい。

フードにブラウンのファーがついている白のショートダッフルにフレアーのミニスカート。ロングブーツを合わせた名前は。
いつもよりは、頑張っておしゃれをしてきたつもりだけれども。
隣にいる真山の存在感に圧倒されてしまっていた。

名前が真山に見とれている間に、すっと荷物を手に取られた。

「えっ…!?先生、荷物くらい自分で持てます!」

真山は名前の言葉には耳を貸さず憮然としながら手を差し出してくる。

「これだけの人混みだ。手を繋いでおかないとはぐれるぞ。」

「…っ!あ、はい。すみません…。」

恐る恐る真山の手を取ると、ぎゅっと握りしめられた。

(あ…先生の手があったかい。)

真山と手を繋いで、駅から参道を通ってお目当ての神社へと向かった。
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