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□真山先生と初詣
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「しかし、三が日は外したと言うのにすごい人だな。」

隣で呆れながらふぅとため息をつく真山をよそに名前は初めて初詣で参拝するこの神社へ向かう情景が楽しくて仕方がなかった。

「参道にいろんなお店がいっぱいあって、わくわくしますね!」

真山は、名前へとふっと微笑みかける。

「まぁ…な。お前のその前向きさは嫌いじゃない。」

真山の存在が隣に在りながら、
名前はキョロキョロと周りを気にしている。
その様子がとてもかわらしく思えた真山は

「おい、はぐれるなよ?
絶対に、俺の手を離すな。」

と、声をかけるのみに留めた。

ようやく境内へたどり着く。
さすがに4日ともなれば呆れるような行列はできていないので割りとスムーズに参拝出来た。

お賽銭を投じて、鐘を鳴らし
一礼二拍手してから手を合わせ
目を瞑ってなにかを一生懸命願う名前の様子をちらりと盗み見る。

ーーこの、小さな体で。
こいつが、懸命に願うのはどんなことなんだろう?

神の御前でこんなことを考える俺は不謹慎だな、と自嘲しながら。
例年通り健康と、担当している生徒全員の合格を願う。

後ろに人が並んできているので、
名前には申し訳ないが
つついて、列を外れるように促した。

はぐれないように再び手を繋いで歩き出す。

真山は名前に断ってから境内にある売店で、3-A全員分の合格鉛筆やお守りなどを購入していた。

(わぁ…真山先生はやっぱり受験生の担任の先生なんだなぁ…。)

休みの日も生徒のことをおもんばかる真山が、何だか素敵に思えて。
名前の胸がきゅうっとなるのを感じていた。

「私も真山先生のクラスが良かったなぁ…。」

ぼそりと呟くと、真山が驚いた顔をして名前を見つめた。

「…どうして、そう思った?」

ただ、何気ない一言なのに。
真摯な顔で見つめられるとドキドキしてしまって、上手く言葉を返すことができない。

「先生が…お休みの日も、生徒のことを考えていてくれてるなんて。
やっぱり…嬉しいじゃないですか。」

どうにか、言葉を返したところで
真山が名前から目を背ける。

「教師なのだから、生徒の受験のことを考えるのは当然だ。
実際…本人の努力と運次第だからな。
俺にはこれくらいしかできん。」

そう呟くと、ニヤリと笑って

「お前の数学の成績をあげることもままならんからな。」

と軽くおでこを小突いた。
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