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□私の知らないあなたの世界
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もう恒例となっている隣の守部家とのランチバーベキューが終わり、苗字名前と守部匡治は、彼の弟妹の水遊びを微笑ましく見守っている。

「ねー、名前おねーちゃーん。
いつ、おにーちゃんとケッコンするのー?」

彼の保育園に通う妹の言葉にどきりとする。

「えっ…?結婚…??」

名前が戸惑っていると、すかさず守部の叱責する声が飛んできた。

「こらっ!変なこというんじゃない!」
「だって、おにーちゃんのおよめさんになったら
名前おねーちゃんがわたしのおねーちゃんになるんでしょ?」

(えっ!?…あ、そうか。そういうことか。
そうだよね。別に深い意味はないよね??)

結婚という言葉の響きに胸の高鳴りを抑えきれず狼狽えている名前を他所に、守部は妹の相手をしている。

「こらっ!いい加減にしなさい!
…もうそろそろ上がろうか?」
「うん!タオルちょーだい?」
「…ほら、ちゃんと体拭いて。
あ、名前さん。弟をお願いできますか?」
「わかった。はい、こっちおいでー!」

彼に言われた通り、彼の弟の体を吹き上げると、テラスから自宅に入り着替えを済ませる。

片付け中は危ないので、弟たちには外からも目が届くリビングでDVDを見せて待ってもらうことにした。

「ふう…すみません、お手数かけました。」
「ううん?二人とも大きくなったね〜。」
「ええ…まだ手が掛かりますけどね。
さぁ、片付けを手伝いましょうか。」
「うん、そうだね。」

ーー彼が、私に敬語を使うようになったのは、いつからだろう?  

隣の家で育った幼馴染みの守部が。
中学に入ってしばらくするまでは敬語抜きで話していたのが。
ある日突然…恐らく、中学の生徒会に入った辺りから名前に敬語を使うようになったことに一抹の寂しさを感じていた。

てきぱきと片付けをこなしていく彼に遅れをとらないよう、片付けていく。

もう、恒例となっている守部家とのバーベキューだけあって
片付けもそこまで手間取ることはなかった。
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