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□デートの悩み。
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彼に恋慕して近くで見ていただけの頃は、彼の隣にいられたらそれで幸せだった。
視線が絡めば夢見心地になり
言葉を交わせば、ただそれだけのことで蕩けそうになった。
いつからだろう、自分一人の胸の内に恋を留めておけなくなったのは。
あの日。
雨降りしきる屋上で、ただ想いを告げられればそれで良かった。
まさか、大人で女性経験が豊富そうな彼が
私と同じ気持ちでいてくれたなんて。
そんな都合のいい事を、どうして考えられただろうか。
私のためなら教師の職を追われても構わないと彼は言った。
「彼を好きだ」という私の想いを
彼が受け入れるには
それだけ大きなリスクを伴うものだと、考える余地もなく。
ただただ、彼が好きで。
彼と一緒にいられればそれで良かった。
はずだったのにーー。
あの雨の告白から半年。
二人の仲もちょうど落ち着いてきた頃。
苗字名前は
昼休みが終わった教室で自分の席につくと
人知れずそっとため息をついた。