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□はじめての冬
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年の瀬が近づき、日が暮れるのが早くなってきた。

苗字なまえは数学の補習。
白川は部活動でそれぞれ遅くなる予定だったので
ここ、昇降口で待ちわせをしている。

「さむっ…」

日も落ちた後の昇降口は寒くて。
思わず、口走ってしまう。

手袋をした手で、コートのあわせをきゅっとあわせて。
いつになったら彼が現れるのかーー期待と不安を感じていたところで
彼は慌てた様子でこちらに向かってきた。

「あの…苗字さんっ!お待たせしました。」

白川がなまえを見つけて微笑むとなまえはふわりと柔らかい微笑みを向けた。

「ううん、私、そんなに待ってないから大丈夫だよ?」

白川は、控え目に微笑むと
そうっとなまえの頬に触れた。

(あ…白川くんの手、あったかい…。)

その大きくて美しい手の温もりが心地よくて。
なまえは自らの手を、白川の手に重ねた。

白川は、なまえが手を重ねてきたことに一旦驚いた顔を見せたが

「こんなに冷えて…すみません。
随分長い間、待たせてしまいましたね。」 

すぐに目を伏せ、申し訳なさそうな顔をする。

「ううん、白川くん。気にしないで?
そんなに待ってないから。」

白川に気を使わせまいと、微笑んで見せた。

「今日は、家までお送りします。」
「えっ…?悪いよ。」
「いいえ、もう外はこんなに暗くなってますし…
何より…貴女と、少しでも長い時間、一緒にいたいんです。
あっ…でも、迷惑…ですよね?」

一気に言うと、なまえは白川に向けて微笑みかける。

「そんなことないよ!私も白川くんと一緒にいたいからっ。」

なまえの言葉に
白川は驚き、顔を紅潮させた。

「えっ…と、あの、…苗字さんも、僕と同じ気持ち、なんですね…?
…今でも、僕、なかなか信じられなくて…あっ、その、貴女の気持ちを疑ってるとか、そういうことではないんです。
…ただ、貴女みたいな女性が、僕なんかで、本当に良かったのか、なんて…。」

顔を赤らめ、不安げに呟く白川の手を。
なまえはそっと自らの手でとる。

「ううん…。
私が、白川くんと一緒にいたいから。
白川くんこそ、私でいいの?」

柔らかい微笑みを白川に向けると。
一旦驚いた後に、たおやかに微笑む。

「すみません。また…貴女に気を使わせてしまって。
では、そろろろ帰りましょうか。」
「うん!」

揃いの制服で、手を繋いで校門を共に出たところで

目の前に、白くてふわりとしたものが
ひらひらと舞い降りる。

「あっ…雪だ!」
「そうですね。」
「道理で寒いわけだ。」

二人は互いに向けて微笑みあうと。
告げられた冬の訪れをそっと手で受け止める。

「あっ…溶けちゃった。」
「ええ。このような雪は溶けやすいんです。
…今度、貴女に雪の結晶を見せてあげたいです。」

ふわりと笑う白川に。

ーーこんな穏やかな二人の時間が
ずっと続きますように。

そう、願って。
なまえは繋がれた彼の手を
ぎゅっと握りしめた。

(End )

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後書きは次頁にて。
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