その他

□渡る世間は偽善者ばかり
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『総ちゃん?』

『姉上?』

『どうしたの、総ちゃん?』

『…ごめんなさい。姉上、ごめんなさい。』

『泣かないで総ちゃん…あなたは今でも私の自慢の弟よ。』

『僕…。俺、俺は…』

『うん。』

『俺は野郎が好きです…ごめんなさい、姉上…』

『総ちゃん謝らないで、ごめんなさいは私の台詞。』

『?』

『あなたに重い枷を負わせてしまってごめんなさい。私のこと気にしてくれてたんでしょ?』

『…姉上。』

『私のことはもういいの。あなたが幸せじゃないと私も幸せじゃないわ。』

『…ごめんなさい。姉上。』

『もう!!ごめんなさいはいいの!!あっちでみんなと、あの人と幸せにね?』




俺は真っ暗な世界でさ迷った。

迷った先で、光の中にいた姉上にあった。

相変わらず、姉上は綺麗で優しくて暖かかった。


俺は姉上の幸せを奪ってあいつに気持ちを伝えたのに、

姉上は俺の背中を押して俺に笑ってくれた。






「総悟!!」

「沖田隊長!!!」

「総悟!!起きろ!!!!」


目を開けると近藤さんは泣き、

山崎はいつも通りに地味に心配そうな顔で覗き見ていた。

土方さんは最後に見たときより眉間のシワが寄ってたし、ほとんど瞳孔開いてやがる。


「顔コワ…」


それが病院で意識を戻して発した最初の言葉だった。



どうやら俺は、チェケラ党の罠にはまって地雷を踏んだらしい。

あの時、咄嗟に致命傷を避けるために横に飛んだが、

爆発の威力で壁の強く叩きつけられた。

数ヶ所の火傷、後頭部への強打、このまま意識を戻さない可能性もあったらしい。

ギャグ漫画の妄想でよかったぜィ。

俺の綺麗な顔に傷が付くとこだった。


俺の意識が戻ったことで山崎と近藤さんは皆に屯所に戻った。


「言いたいことがあんだろ?」


近藤さんは俺になのか土方さんなのか、両方に言い残して病室を去った。


「…チェケラ党は…」

気まずくなったのか土方さんが言葉を発した。

「俺の狙い正確ですぜィ。」

あの時、土方さんの声を聞いて、

自分たちの見回りコースを知らない指名手配犯なんてもっと簡単に捕まえられる。

むしろ、見回りコースを狙われた。

そう思った時、数メートル先で俺を見ていた名前も知らねェ奴の足に向かって刀を放った。

らしくなかったのは俺もか…。


「見事にクリーンヒットして捕獲。芋づる式に奴らのアジトも割れた。」


土方さんはずっと窓から外を見ていた。


「なんでィ?緊張してんですかィ?」

「…すまなかった。」

「なにがでさァ?」

「グッ…だ、だから、怪我させちまって…。」

「はァ?」

「俺が付いてた…。」


土方さんのこういう所が偽善者に見えて、イライラした。

と、思い込んでたのかもしれねェ。

今は、そうでもねェ…。

自分に厳しく、不器用なりに周りに気をかける、

ただただ真っ直ぐに生きるそんな土方さんが好きなんでィ。



しかし、俺は器用に生きてやりますぜィ。




「大丈夫でさァ。土方さんに責任取ってもらいやすから。」


そう言って不適に笑う俺の唇は、土方さんの唇で塞がられた。


「そいつは願ったり叶ったりだ。」


煙草の残り香を残して土方このヤローは着替えを取りに屯所に戻った。


やっぱり偽善者の代表かもしれねぇ…。


俺の頭に過った思考は睡魔によって掻き消された。




えんど
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