本棚(短編)
□プレゼントは白く歪んで
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これは、いつの日か訪れるかもしれない
平和で
優しくて
愛しい
そんなチャチな言葉でしか表現出来ない、
望んで良いのか躊躇うほど
「普通の聖なる夜」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あともうちょっとか………」
つつじはにらめっこをしていた時計を机に戻すと、緊張したように息を吐いた。
――…今日はクリスマス…17時からバーの方でお祝いをするんだよね…。
いつもお世話になっている石ヶ原さんと(お世話になっている覚えはないけど)雪明さんにプレゼントを用意した。
「…1カ月以上前からやったことすらない編み物をコツコツコツコツと………。完成しないかと思ったけど…ラッピングまでできて良かった」
つつじは真っ白にラッピングされた物とブルーの物を大切そうに撫でた。
編み物初心者の彼女は、それぞれのイメージに合わせて必死にマフラーを編んだ。
――…若干雪明さんのマフラーのほうが丈が長かった気がするけど、まあ、気にしない気にしない。
「石ヶ原さんのは紺で、雪明さんのは白で編んだんだよね…。喜んでくれればいいなぁ…」
「僕は全然白で構わないけど…、強いて言うなら石ヶ原くんにもプレゼントを渡すのは喜ばしくはないかなぁ〜」
いつの間にかつつじの部屋に入り込んでいた歪は、彼女の机の上に腰掛けて必要以上にニヤニヤと笑っていた。
「………………はぁ……」
「ちょっ…、つつじちゃん酷くない!?…最近冷たいよねぇ〜、せっかく石ヶ原くんがケーキ出来たって言ってたから呼びにきたのにぃ〜」
歪はさっさと白いプレゼントのリボンをほどくと、自分の首に白く優しい色合いのマフラーをくるくるっと巻き付けた。
「ああっ!!なに勝手に開けて巻いちゃってんですかぁっ」
「…何でって…、これ、僕にくれるんでしょう?」
文句たらたらのつつじを歪はぐいっと引き寄せると、見下ろすように彼女に顔を近付けた。
「はぁ〜、そうですよ。雪明さんにクリスマスプレゼントです」