短編
□浮気の理由。
2ページ/3ページ
ガシャン、と金属が軋む音が屋上に響く
(赤司っち……)
黄瀬は屋上までくるとフェンスに背中を預けた。
「……俺の事も見て下さいッスよ !! 」
ガシャン、と、今度は更に大きい音が響いた
黄瀬はやりきれない怒りをフェンスにぶつけた。
「僕はお前をすっと見ているつもりだったんだがな」
「ッ…… !! 」
誰かの気配に目を上げればそこには赤司がいた。黄瀬はまたしても逃げようとするも、量腕を捕まれ、フェンスに縫い付けられる。
「涼太」
「離してっ……」
「逃げるな」
「赤司っち…… !! 」
「僕はお前が好きだ、愛している」
美しい赤と黄のオッドアイが黄瀬を見据える。
「………え?」
「だから他の女の所へ行くな」
「……」
「お前には僕がいるだろう ? 」
「でも赤司っちには他にいるッスよね ? 」
黄瀬は涙目で訴える。
「何を勘違いしているのかわからないが、涼太。お前以外には誰もいない」
「う、嘘ッス !! 」
「嘘だと思うか ? 」
「だって、だって……」
「涼太」
名前を呼ばれ、黄瀬はビク、と肩を揺らす。
「ならこのハサミで僕の事を刺せ」
「あ、赤司っち !! 何言ってるんスか !! 」
「僕の事をそう思っているなら……」
赤司はポケットから取り出したハサミを黄瀬に握らせる。
「あっ……あぁっ……うぅっ……」
「涼太にこんな顔させた僕が悪いんだ」
「違う !! 赤司っちは……」
「寂しい想いをさせてすまなかった」
「赤司っち、俺ッ……」
ガシャン、ハサミは床に叩き付けられ、黄瀬は赤司に抱き付いた。赤司は黄瀬を抱き締めると、優しい声で、宥めた。
「真太郎はあくまで大切な友人だ」
「……寂しかったッス」
「ああ」
「俺、捨てられたかと思ってッ……」
「僕は誰よりもお前を愛しているよ。捨てられるわけがない」
「赤司っちぃ……」
ポンポン、と赤司は子供をあやすかのように黄瀬の背中をさする。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいッ」
「もういいんだよ、涼太」
「でもッ」
「誤解が解けたんだ。僕は謝罪の言葉よりも、僕の名前を君の口から聞きたいよ」
滑らかな手つきで黄瀬の唇をなぞる赤司の瞳からは、妖しく光る。
「せ、せいじゅうろう……」
「許してやろう」
ご褒美だよ、と赤司は黄瀬に口付けた。
「っは、赤司っち、大好きッス」
「僕も、愛しているよ涼太」
浮気の理由
( 貴方が好きすぎて辛いくらいです )
>>>あとがきと後日談