正義の味方じゃないヒーロー

□第1章
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とうとうこの日が来たのか

緩む頬をぐっと閉めながら鏡に向かい、身なりを整える。

小学生の時に父親が他界し、パートなどで生活を支えてくれた唯一の家族である母親に今朝「大切な話があるから学校が終わったらすぐに帰ってきてね」と言われた。
数年前に彼氏がいると言われ、その後も特に生活は変わらなかったが先週辺りから家に帰る時間が遅くなっていた。俺ももう高校生だしアルバイトもしていたので特に気にしていなかったが今日の母親の表情を思いだし、あんなに深刻な表情をすると言うことは…と、 この後の話を想像し、パンと頬をもう一度叩いた。

もう高校生だから特に気にしなくていいのに。

親が幸せになることを悲しむ息子なんているのだろうか?

息子の俺が言うのは変だが母親の容姿は悪くない。
子供ながら親がモテていることは知っていたし彼氏の話を聞いた時も特に驚きはしなかった。

「母さん、この格好でいい?」

「え?うん、そうね。レストランとかじゃないからどんな格好でも大丈夫みたい…あのね、要。これから会う人なんだけどね?」

「彼氏さんだろ?」

「え?…うん、何で分かったの?」

「何となく…どんな人?優しい?」

「うん、凄く優しい人なの。でね、要。実はお母さん、結婚して彼の家で住もうと思ってるの、要も一緒に」

「俺も?いいけど…新婚なのにいいの?」

「やだ、何言ってんのよ。実はね、結婚しようと思ったのは彼の息子さんの事が理由なの」

「息子がいるんだ?何歳?」

「要と同い年の高校2年生。実はね、学校で色々あって今家で休んでいるみたいなの。彼、私の付き合っている人ね。彼は忙しい人だから私が夕方パートが終わってから様子を見に行っていたんだけど一緒に住んだ方がもっと側で世話が出来るかな?って話になってね…勿論要が嫌なら住んだりなんかしないんだけど…一度、お互いの家族に会おうって話になって」

「そうなんだ、俺は全然いいよ。前から会いたいと思っていたし、母さんには幸せになって欲しいからさ。」

そう伝えると「ありがとう」と、母さんは優しく微笑んだ。

母さんの話によると俺と同い年の息子さんは小学生の頃から全寮制の男子校に通っていて今までずっと寮に暮らしていたらしい。
で、学校でトラブルがあって今は実家に帰ってきてるらしい。
精神病にかかって毎日辛そうにしている彼を元気付ける為に母さんは毎日通っていたそうだ。


ピンポーン

「あ、来たみたい」

玄関に向かう母に着いていくとそこには今まで見たことの無いぐらい顔の整ったおじ様がこちらを見てお辞儀をした。

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