*Osomatu*

□幻像の冷気よりも
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夢を、見た。

「………ッ!!」

ひどく、嫌な夢だった。
思わずがばりと起き上がってしまうくらいに。

…もし、正夢になってしまったら。
そう考えただけで、背筋が凍った。
あんな現実なんて、あまりにも冷たい。冷たすぎる。

――きっと、あんな風に兄さんに嫌われてしまったら…僕は生きていけない。
完全に、兄さんに依存してしまっているから。


翌朝。
程好い涼しさに、小鳥達が囀りを交わす青天とは真逆の心身。
あの夢を見て飛び起きてから今まで、少しうとうとしては夢を思い出して起き、少しうとうとしてはまた夢を思い出して…というのを繰り返したせいでまともに寝れやしなかった。
寝かせてください、と叫ぶ気力もない。

「…はぁ……。」

深々と溜め息。
僕らしくもない二度寝態勢へと、ゆるりと瞼を閉じて移る。
こういう時、ニートで良かったと思う。
本当、夢ごときにここまで精神をやられたり二度寝したり、僕らしくない。

結局、起きたのは昼前だった。
堪忍袋の緒が切れた母さんに、「いい加減起きなさいこんのクソニート共ぉぉぉっ!!」と布団をひっぺがされて、6人まとめて1階へ強制連行。

「ふぁあ…ねっむ〜…」

「いや昨日一番最初に寝息立ててたのおそ松兄さんじゃん。どんだけ寝れば気が済むのさ…。そういえば、チョロ松兄さんまで寝坊なんて珍しいね。どうしたの?」

僕の代わりに長男にツッコんでから、あざとく首を傾げたトド松にそう聞かれた。
…何と言えばいいのか。
長男に嫌われる夢を見たせいで寝れませんでした、なんて言える訳がない。

「…別に、なんかいい感じに涼しかったからうとうとしちゃって、そのまま寝ちゃっただけだよ。」

「…ふぅん?」

へらり、と笑って誤魔化す。
末弟は答えを得たことに満足したのか、スマホをいつものように弄り始める。
誤魔化せたことに安堵して、そっと溜め息を吐いた。
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