短編*歌い手
□放課後の教室
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指で優しく涙を拭って、もう片方の手で頭を撫でてくれる
「僕ね、ほんとは、うまくいくな、って思ってたんだ」
顔をあげると、眉を下げるまふ君の顔
「本気で協力はしてたけど、
後悔ばっかりしてた、」
『………………』
「僕のこと、見てくれたら良いのに、って」
ほんとは、毎日思ってたよ
頬を少し赤く染めて、けれど切なそうに彼は語る
「僕なら、泣かせたりしないのに」
『…………、』
「僕なら、なまえが辛いときは、
そばにいて慰めてあげるのに」
涙で濡れた冷たい頬を、彼の両手が包み込む
「……僕じゃ、だめですか?」
*放課後の教室*
(冷えた頬も、冷えた心も、僕がいつでも暖めるから)