Out of eden

□いざ、遊勝塾へ
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「――あー。これが遊勝塾かあ」

 昨日の試合を見た後、私は榊遊矢という子が所属するデュエル塾に来た。

(ペンデュラム召喚、か……)

 昨日の試合を思い出す。
 白熱した試合。榊遊矢少年がピンチとなるが、謎の召喚方、【ペンデュラム召喚】とやらで逆転勝利が起きた。

「チャンピオン、ストロング石島も知らない召喚……LDSにもなかったわけだし」

 榊遊矢のペンダントらしき物から発した光――その後現れたペンデュラム召喚。
 ぶっちゃけ気になる。

「……それにしても」

 辺りを見回し、再度確認。
 ……何度見ても誰もいない。

(おかしいな……確か、入塾希望者は大勢いたはず)

 高校の友達も「行ってみる」とか行ってた。
 なのにいない、となると……入塾希望者は0になった?

「……ま。百聞は一見に如かずって言うし」

 情報を聞いて揃えるより、まずは見てみようか。
 自分の目で見た方が早い。

「というわけで……」

 お邪魔しまーす、と小声で言いながら、塾の中に入った。

 ……シーン……。

 ……返事がない。え? まさかガチで留守か?

「いやいやいや……まさか、そんな……」

 鍵もかかってなかったし、誰かしらいるはずだ。
 じゃないと泥棒さんが来ちゃうし。……あれ? 今の俺も泥棒さん――にならなくても、不法侵入になっちゃうか?

「違う! 俺は決して泥棒さんでは「できたー!!」「熱血だーーーッ!!」ぐはぁッ!?」

 一人であらぬ可能性を打ち消していると、突如目の前のドアが開いた。
 お陰で顔面強打だ。ヒリヒリすっぞ、コラ。

「ん? 今、何かぶつかったような……」

「ようなじゃない。ガチでぶち当たっとるわ」

「うわっ!!?」

 ドアの陰から覗いてきた少年の触覚(みたいな髪)を掴み、そしてもう片方の手で俺の顔を合わせた。
 痛そうな顔をしてるが、こっちはもっと痛いんだ。

「入ってきた俺が呼び鈴なりインターホンなり押さなかったのも悪かったが、だからって顔面強打の刑はないだろ。シバくぞ、コラ」

「え? え?」

 わけわからん、みたいな顔をしてる。
 ……と、ここで顔とトマトみたいな色彩の髪を見て「ん?」となった。

「……君。昨日のテレビに出た、榊遊矢?」

「そ、そうだけど……?」

 少年の顎を持って目線を合わせながら問う。
 やっぱり本人で間違いないらしい。びくびくしながらも頷いてる。

(トマト色彩の髪だから間違いないな。それにしても何だろう、この加虐心そそられる顔は。顔立ち結構良いわね。ルビーみたいに緋の瞳が、デュエルん時は凛々しかったのに、今は狼に食われそうな子兎みたいだ。ギャップ萌え? そこがいいケド)

 脳内でノンブレスにそうつぶやく。それくらい遊矢という目の前の少年は可愛いんだ。
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