心の松(おそ松さん

□嘘
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俺は嘘をついた。可愛いブラザーを守るために。
本当は嫌だった。俺の目の前から一松が消えてしまうこと、二度と話せなくなること。でも、一松には生きていて欲しい。
あいつが素直になれないことなんてずっと前から知っている。ただの兄弟じゃない。それなりのこともした。あいつが俺のことをよく思ってないないことも知っている。だけど、嫌と言いながらそばにいてくれたことが本当に嬉しかった。

「グッバイ、ブラザー・・・・・」

走る一松の背中を見ながらポツリと呟いた。
目の前の敵は俺を殺そうとする。間一髪で攻撃を避けるも腕に刃がかすり、赤い血が静かに流れた。痛い・・・・・痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

「さっさと終わらせたいんだ、一松さんよぉ」
「お、俺も早く終わらせたいね・・・・・。痛いのはゴメンだから」
「どうせ死ぬんだから痛いのは我慢してくれや。すぐ楽にしてやるからさ」

一体、俺はいくつの嘘をつくのだろうか。相手は一松だって思い込んでいる。いつもの俺なら「俺はカラ松だ」って言ってるはずなのに。しょうに合わないことをしているのはわかっている。それの代償だってある。


決闘はどれぐらい続いたかなんてわからなくなるくらい時間はたっていた。限界はとっくに過ぎていた。俺はもうじき終わる。覚悟は決めていた。

「生きて帰るって約束したのに・・・・・ごめんな、一松・・・・・」
「なぁにブツブツ言ってんだよ」
「・・・・・」

最期の最期、限界を超えた体から出もしない力を振り絞り、敵目掛けて走った。






「おい!クソ松!!クソ松!!」

生暖かい液体が体を濡らし、耳元で誰かが呼んでいる。

「一、松・・・・・?」
「なんで嘘ついたんだよ!生きて帰るって言っただろ!!」
「フッ・・・・・。かろうじてまだ生きてるぜ、ブラザー」
「そんな弱々しい声で言われても説得力ないんだよ!帰ってこないから来てみれば、この有様で。何やってんだよ、クソ松!」

叫ぶことなんてない一松が涙目にしながら叫んでいた。
悪いことしたな。たぶん、死んでからも後悔するだろうなと精一杯腕を上げて一松の流れる涙を拭った。

「泣くな、一松。俺なんて・・・・・俺のことなんか嫌いなのだろう?」
「ああ・・・嫌いだ。この世で一番嫌いだ。でもな・・・好きだ、クソ松」
「良かった。最期にそれだけ聞けて。お・・・も、あ・・・して・・・い・・・ま、つ」
「・・・・・ねーよ。聞こえねーよ。なぁ、答えてくれよ。いつもみたいに。こんなのクソ松らしくないよ・・・・・」



俺は嘘をついた。愛する一松のために。
嘘の代償は俺の命じゃない。俺にとっての代償は一松の笑った顔を見ることができなくなったこと。
今度こそ約束する。俺はいつでもお前のそばにいよう。


俺も愛してるぜ。ありがとう。
そして、さよなら・・・・・。




END
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