思い出とは
□1話
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なんの前触れも無く突然NEST基地へと現れたサムにミソラは驚きつつも、彼との再会を純粋に喜んだ。
彼がここに来る事は最近滅多に無かった。
時折、互いの近況報告をメールを交わす事くらいしか交流は無かった為、サムはきっと自分達とは関わることを止め、平凡な人生をカーリーと歩みたいのだろうなとミソラは思っていたのだ。
ならば必要以上にこちらから連絡を取る事は彼を困らせるだけだ、そう判断していた。
そうすることが互いにとって良いのだと思っていた。
少しばかりの寂しさを感じながら過ごしていたミソラの前にサムは連絡も無く現れ、ミソラは最初こそ驚いたもののサムの来訪を純粋に歓迎した。
「プティマスからこっそりと教えて貰ったんだ。オートボットとディセプティコンが和平を結んだって」
「そうなの。政府が発表するまでは箝口令が出されているみたい」
ミソラも和平を結んだことを聞いたのはごく最近だ。
サムと同じくオプティマスから教えて貰った。
シカゴの戦いにおいて命を落としたオートボットとディセプティコン達は蘇っている。
ディセプティコン達は人間の監視下に置かれており、それに対して反発する声がいくつも上がっているものの全てメガトロンが引き受け、異論ある者に対しては鉄拳制裁を加えているのは周知のことだ。
ミソラがそうサムに伝えれば、サムは意外そうに目を見開く。
「あのメガトロンが?」
「うん。あのメガトロンがね」
心底意外だと2人は言いたげに顔を見合わせる。
彼の性格的に面倒くさいと言いそうなのに、意外なことに反論するディセプティコン達を時に言葉を使い、時に暴力を用いて説得しているのだ。
最も暴力の被害に遭っているのは主にスタースクリームで、彼が時々ラチェットのリペアルームに運ばれる事をミソラは知っている。
重要パーツを傷つけないように攻撃しているメガトロンに対しミソラは肩をすくめる。
「見た目と反して意外と面倒見が良い方だから・・・ある意味ではオプティマスよりも冷静だしね」
苦笑交じりにミソラが告げればサムは何かを考えるかのように少しだけ視線を落とす。
どうしたのだろうか?そう思いながらミソラがジッと彼を見つめているとサムは意を決したかのような顔をして口を開く。
「ずっと気にはなっていたんだよね」
ポツリとなんの前触れも無くサムは告げた言葉にミソラは不思議そうに目を瞬かせながらサムへと視線を向ける。
「何が?」
「・・・ミソラとメガトロンの関係」
向けられたサムの眼差しは純粋に興味があると言いたげなものだ。
嫌ならば聞きはしない、そう言うかのようなサムの眼差しにミソラは困ったように微笑む。
ミソラがかつてメガトロンによって飼われていたということは周知のことだ。
誰もがそれを知っていながらも口を閉ざし、何も知らないと言うかのように接してきてくれる。
彼等なりの優しさだとミソラは解っている。
サムのようにそれを指摘してくる者は誰も居ない。
「知りたい?」
「正直な気持ち興味はある。あのメガトロンがなんで君を生かして、自分の元に留めようかしたのかって事はね。だけど、ミソラが嫌なら聞かないよ」
ミソラを傷つけることは望んでは居ないのだ。
そう言うかのようなサムの発言にミソラはやっぱりサムは優しいなと思いながら彼の隣に座る。
「ちょっと長くなるかな」
朧気になっている記憶を呼び起こしながらミソラはサムの隣に腰掛けると静かな声でかつての記憶を、メガトロンと初めて出会い、そして彼と共に過ごすことになったのかを話し始めた。