Over

□7話
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 先程まで上機嫌だったはずのバンブルビーだったが、今の彼からはそれが嘘だったかのような苛立ちで満ちていた。
 バンブルビーがこれほどまでに機嫌が悪くなっているのは、サムの元にティスランドも同行すると伝えられたからだ。

 『バンブルビー・・・仕方ねぇだろ?』

見るに見かねたサイドスワイプが二人のフォローをしているのだが、完全にへそを曲げてしまったらしいバンブルビーはサイドスワイプの言葉に耳を傾けない。
 普段は愛らしくクリクリとしているはずの目が今は不快そうに細められており、その視線の先にはヒューマンモードになっているティスランドが立っている。

 『”許せないッ!!””断固拒否します!!”』

 『お前なぁ・・・ガキみてぇな事を言うなよ』

呆れたように頭を抑えながらサイドスワイプは呟く。
 これはもしかしたら自分一人だけでは対処しきれないかもしれない、そう判断したサイドスワイプは誰かに援軍を頼むべきかと考えていた時だ。

 「ビー?何揉めているんだ?」

いつまで経ってもやってこないバンブルビーに痺れを切らしたらしいサムが迎えに来る。サムの姿を見たバンブルビーは嬉しそうに耳の部分をピコピコと動かし、この状況を打破できる人物が現れたことをサイドスワイプは心から喜びながら片手をあげた。
 何故自分がこんなにも歓迎されているのか解らないサムは小首を傾げながら、バンブルビーへと近づいたとき見慣れた人物を見て一瞬だけ歩みを止めた。

 「この姿で会うのは久しぶりだな」

人間の姿をしているときのサムとの思い出はあまり良いものがないティスランドが苦笑をそう言えば、サムも似たような表情をしながら頷く。

 「君がその姿って事は大学の時と同じく人間の振りをして僕の護衛に就くって事?」

 「まぁ・・・そんなものだ」

 『”違うわ””この泥棒猫””上司にたてつきやがったッ!!!”』

間髪入れずにサムの言葉を否定したのはバンブルビーだ。
 彼は必死な表情を浮かべながらサムに対し、ティスランドが同行することを拒否させる為に説得を試みる。
 けれどバンブルビーとの会話はラジオを使ってのものだ。
 初めて出会ったときと比べてスムーズに行えるようになった会話だが、言いたいことがラジオ音源に無い場合がある。
 バンブルビーの言いたいことを理解しかねたサムの眉間に皺ができはじめ、最終的にサムはバンブルビーからの説明では無くティスランド本人に事情を聞こうとするが、そうはさせないというかのようにバンブルビーが妨害を行う。

 『サム。俺から簡単に説明する。ティスランドがジャズと喧嘩して、その罰としてサムと一緒に当分の間は行動をして頭を冷やすようにってオプティマスが罰を与えたんだ』

見るに見かねたサイドスワイプがバンブルビーを押さえつけながら自分達の事情を説明すると、サムは驚いたように目を見張りながらティスランドを見る。

 「珍しいね。ティスランドが喧嘩するのって・・・それも相手はジャズ?君って上下関係がしっかりしてるから、そいういう事をするようには思えないんだけどね」

 「私はまだまだ未熟者だ。サムが思っているほど凄い人物ではない」

 『”その通り!!””良く解っていらっしゃる!!”』

パチパチと手を叩きながらそう告げたバンブルビーだったが、その目がティスランドを蔑むかのようなモノである事に気づいたサムは呆れたような顔をしながら深々とため息を吐く。
 バンブルビーが本心からティスランドに対して言っているのでは無いことくらい、サムを含めたこの場の者達は理解している。
 だが、だからといってこの行動を認めるわけにもいかず、かと言って褒めて良いわけでも無いのだ。

 「・・・バンブルビー」

ティスランドが名を呼ぶがバンブルビーは聞こえていません、と言うかのようにそっぽを向いて黙り込む。
 無言のまま怒っていますよアピールをするバンブルビーの姿は微笑ましく、その姿を見たサムは可愛いと言うかのように目を細めて笑い、サイドスワイプは何をやっているのだ?と言うかのような呆れたような顔をして見つめる中、ティスランドは意を決したかのような声でバンブルビーに話しかけた。
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