Over

□7話
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 「私ではなくて将校殿ならば一緒にサムの護衛をしても文句は無いか?」

ティスランドの言葉に誰もが絶句をしてティスランドを見つめる事しか出来なかった。
 一番最初に我を取り戻したのはサイドスワイプだ。
 彼はバンブルビーから手を離すと、自分よりも小さな存在になってしまったティスランドに対して思い直せと言うかのような声で話しかける。

 『お前・・・サムと一緒に行動するってのがお前に与えられた罰だろう?それなのにそれを代るってどういう意味なのか解ってるのか?』

 「仕方が無いだろう?此処でこうしていても時間を無駄に使うだけだ」

 『だからってなぁ。勝手な事をしたらオプティマスが怒るぞ?下手すりゃ、新たな罰が加えられる可能性だってある』

 「そうかもしれないな。だが、問題を起こしたのは私だ。そのせいで無関係なバンブルビーが嫌な思いをするのも可笑しな話だとは思わないか?司令官にもそう言えば彼ならば納得してくれるはずだ・・・・それに」

不自然な状態で言葉を切ったティスランドの青い目に暗い感情が浮かぶ。
 その感情を隠すかのように少しだけ目を伏せたティスランドは力無い声で呟く。

 「私なんかよりも将校殿の方がよっぽど頼りになる」

彼ならばサムとバンブルビーの両方と上手く付き合えるだろうとティスランドは認識している。巧みな話題と、軽快な話術、それらを使ってきっとジャズがサムとバンブルビーと良い関係を築くことくらい簡単に想像出来て、それは決してティスランドには出来ない事だ。
 
 「バンブルビー。構わないな?司令官と将校殿への報告は私の方から行う」

ぎこちなく微笑んだティスランドはそうと決まればすぐさま二人の元へと向かい、ジャズと自分の立場を変更してもらうための話し合いをするため歩き出そうとしたときだ。
 腹部に固い感触がしたかと思えば足下が地面から浮き上がる。
 忙しなく動き回る視界の中、気づけば車の後部座席に座っておりご丁寧にもシートベルトがきっちりと装着されていた。

 『”ティスランド””貴方が良いわ”』

 「・・・・良いのか?」

 『”意地悪ね”』

 「すまないな。私はいつもバンブルビーには迷惑ばかり掛けている」

申し訳ない気持ちなりながらそっとドアを撫でれば、ラジオから何とも言えない音声が流れてきたことからバンブルビーなりに複雑な心境ではありながらも、自分を受け入れてくれたのだなぁとティスランドは思う。
 申し訳ないような、それでいて助かったと言うかのような、何とも言えない気持ちになっていると運転席のドアが開きサムが乗り込んでくる。

 「前にも言ったけど、君って頭固すぎだよね」

苦笑交じりの声音でサムは告げるとハンドルをポンポンッと軽く叩く。

 「きっと君と一緒に居られる時間は短いんだろうけど、よろしく頼むね」

 「あぁ。こちらこそよろしく頼む」

 「よしッ!話はまとまったことでカーリーを迎えに行って、僕が住んでいるアパートに行こうか!!」

バンブルビーの気が変わらない内にそうした方が良いだろうと判断したサムがそう告げれば、バンブルビーは同意だと言うかのようにエンジンを一度大きく吹かすとカーリーが居るだろう場所へと向かって移動を開始する。
 去って行く黄色いカマロの姿をサイドスワイプが何とも言えない気持ちになりながら見つめていたが、ティスランドと目が合うとヒラリと手を振ってくれた。
 凄まじい速さでバンブルビーが移動をする中、ティスランドは今になって自分がどこで暮せば良いのか知らない事に気づく。

 『”報告””近くのホテルを予約した””必要なモノは買え””『ただし、無駄遣いは無しだぞ?』”』

そう言うのと同時にティスランドの方へと一枚のカードが投げられる。
 後半の音声、それがジャズのものであったことにティスランドは驚いてしまった為、飛んできたカードを手でキャッチすることが出来ず、顔面で受け止めることになってしまう。
 その姿を見たバンブルビーがラジオから笑い声を流せば、止めろと言うかのようにサムがハンドルを手で軽く叩いた。
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