Over

□7話
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 一夜明けた日、朝食を済ませ食後のコーヒーを飲んでいたティスランドの耳に来客を知らせるインターフォンの音が聞こえてくる。
 サムが客人と何やら一言二言言葉を交わした後、誰かがエレベーターを使って上がってくる音に気づいたティスランドは客人の分もコーヒーを用意した方が良いだろうと判断すると座っていたソファから立ち上がった。
 
 「サム。客人は何名だ?」

 「二人だよ」

 「そうか。カップは適当なモノを使わせてもらうぞ」

ティスランドがコーヒーの用意をしてくれると解ったサムが感謝の言葉を口にするのを聞きながら、キッチンへと足を踏み入れたティスランドはコーヒーカップを二つ手に取るとそれを軽く洗う。
 水気を拭いてからコーヒーを煎れてリビングへと戻った時、そこに居た人物を見て驚いたように目を見張る。

 「珍しい客人だな」

 「そいつはこっちの台詞だ、お嬢さん」

テーブルの上にカップを置いたティスランドは客人、シモンズへと手を差し伸べれば少し顔を引きつらせながらシモンズは手を握り返してくれる。

 「・・・・握り潰すなよ?」

 「望みなら」

 「止めろ!!お前さんの冗談は冗談に聞こえんッ!!!」

悪手し立てを強引に振り払ったシモンズはプリプリと怒りながら、部屋の隅で身を縮めていたサムの姿を見つけると、急ぎ足でサムの元へと向かいヒソヒソと声を潜めて会話を始めた。

 「何故あのお嬢さんが居る?」

 「えぇっと、事情があってね。なんか罰を受けている最中らしい」

 「はぁ!?罰を受けているのは我々の方じゃないか!!あのアグレッシブお嬢さんと初めて出会ったときのことを覚えているか!?銃を持って、威嚇した、凄まじいお嬢さんだぞ!?その正体はマルハナバチと同じ金属生命体だ!!」

 「僕に文句を言われたって困る!!!」

声を潜めている二人だったが人間とは異なる聴覚を持っているティスランドには二人の会話は筒抜け状態だった。
 シモンズが自分をどう評価しているのかティスランド理解すると、微かにため息をこぼす。何か用があってシモンズがサムの元に来たのだということは何となく解っている為、彼等の邪魔にならないようにここには居ない方が良いだろうと判断するとティスランドは部屋の隅に居る2人へと声を掛けた。

 「サム・・・少し外出してきても良いだろうか?」

 「え、あぁ、うん。良いよ。この辺の地図とか必要だよね?」

 「不要だ。夕食までには戻る」

壁に掛けていた上着を羽織ったティスランドはサムを見ることなく部屋を出る。
 外に出ると排気ガスの臭いをすぐに感じ取り、その不快さに顔を歪めたときだ。視界の片隅に銀色に光る何かの存在に気づく。
 それへと視線を向けた瞬間、ティスランドの意識は少しずつ薄れていく。
 ゆっくりとした足取りでソレに近づいたティスランドを歓迎するかのように、ソレはドアを開けて自身の中へとティスランドを招き入れる。

 『・・・万事順調に事は進んでいるようだな』

楽しげな声でそう呟いたのはサウンドウェーブだ。
 自身の助手席に座ったまま身じろぎ一つしないティスランドへと視線を向けると、焦点の合わない青い目がぼんやりと宙を見ている。
 ティスランドの持つ色が青であることに不服そうに排気を一つしたサウンドウェーブは、どこからかコードを取り出すとティスランドの首筋へとソレを迷うこと無く差し込むのと同時に作業を開始した。

 『お前はスタースクリームの元へは返さないぞ、ストラトス』

ストラトスの名を呼んだ瞬間、オートボットを意味する青い瞳が一瞬で赤く染まった。
 ソレを満足そうに見つめながらサウンドウェーブは新たに伸ばしたコードでティスランドの頬をそっと撫でた。 
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