パパと呼んで
□1話
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オプティマスに連れて来られたのは彼個人に与えられている執務室だった。
応接用のソファとテーブルが置かれている場所へと若葉を座らせたオプティマスは、マグカップを取り出すと若葉へと問いかけてくる。
「すまない。いつもは緑茶を用意しているのだが、数日程前に緑茶パーティを部下として全部飲んでしまったんだ。補充を頼んでは居るのだが緑茶は高いから中々仕入れてもらえないんだ」
「いえ、お気遣い無く」
慣れた手つきでコーヒーサーバーを操作し、二人分のコーヒーを煎れたオプティマスは湯気の上がっているマグカップを差し出す。
「ありがとうございます」
「砂糖とミルクはいるかな?」
「いえ。いらないです」
見るからに熱そうなコーヒーを冷ますため息を吹きかけていた若葉だったが、聞こえてきた音になんだと思いながらオプティマスへと視線を向けた瞬間、オプティマスの行動を見て若葉は絶句した。
そこには大量の砂糖をコーヒーへと投入しているオプティマスの姿があったからだ。驚きの行動はそれだけで留まらず、オプティマスはカップギリギリまでミルクを注ぎ入れていた。
出来上がった物を満足そうに見た後、オプティマスはソレを迷うこと無く口へと運ぶとゴクリと一口飲む。
「・・・甘党なんですね」
「あぁ!君も飲んでみるかい?」
「いえ、大丈夫です。間に合ってます」
ブラックコーヒーが入っているマグカップを微かに持ち上げると、オプティマスは少し残念そうに眦を下げる。
「ここには甘党があまり居ないんだ。メガトロンの部下に一人居るんだが、彼も忙しいようで中々一緒にお茶を飲む機会が無くて寂しい思いをしている。まぁ誘っても考える間もなく素っ気なく断られるだがね」
「大変なんですね」
「あぁ。そうなんだ」
もはやコーヒー牛乳と言って良い飲み物をゴクゴクと飲んでいたオプティマスは、カップの中身を半分近く飲み終えるとソレをテーブルの上に置く。
「何があったのか聞いても良いかな?」
聞く、その言葉を聞いた瞬間、若葉はオプティマスへと視線を向けていた。
オプティマスは穏やかに微笑んでいて、ただ黙って若葉の言いたいことを聞こうと言うかのような待ちの体勢をとっていた。
その反応はここに来て初めての対応だった。
「少し、色々とあって」
気づけば若葉はあの場所に居るまでに自分がしてしまった行動に関してポツリ、ポツリと口を開いていた。
途中、センチネルが母を侮辱したことを伏せつつ、若葉は彼に対する暴言を吐いてしまったと口にしたときだ。
「すまない」
「え?」
「君が酷い事を言ったのは・・・先にセンチネルが何か君の気に障るような事を言ったからなのだろう?」
見て知っていると言うかのようなオプティマスの言葉に若葉は、驚きのあまり言葉を見失う。それが答えだと解ったらしいオプティマスの穏やかだった目が愁いをおびたものへと変わる。
「センチネルとメガトロンとの間には少しばかり”わだかまり”があってね」
どうすることも出来ない問題なのだ、そう言うかのようにオプティマスは呟くと冷めてしまったコーヒーをそっと口へと運んだ。