MEMO
◆イベント関連とか [追記]
困ったように微笑んだその顔が、自分を見つめる温かな瞳が、どうしようもないほど見覚えのあるもので、親近感を抱いてしまうものであったことに少女は困惑をする。
「そうだな」
少女の気持ちを解っていると言うかのように笑ったその人は、父は少女の返答が当たり前のように受け入れていた。
「いきなり父親だって言われても困るよな。・・・生まれてから一度も会っていないんだからしかたないか」
感動の対面とまでは望んではいなかったが、せめて自分を見て好意的な反応を望んでいたのは親としての我儘でしかないということを父は認識していた。
「私は夫としても、父としても、2人に対して何一つ満足に出来なかった」
そこに致し方のない理由があったとしても、それは大人の事情でしかないことを父は解っていた。
娘にはそれは通用しないことくらい父は解った上で、娘の全てを受け入れようとしてくれている。
「お前の元気そうな姿を見られて良かったよ」
寂しげに微笑むその顔が、何もかもが既に自分の手の届かない場所にあるのだと解っている父の顔を見た少女は、無意識の内に手を伸ばす。
「お父さん」
父と呼ばれた事に対して父は驚いたように目を見張った後、困ったように微笑むと娘の頭をそっと撫でる。
「お前が父と呼ぶべき人は私ではないよ・・・お前がそう呼ばなければならない人は他に居るだろう?」
返された現実。
それがどうしようもなく苦しくて少女は静かに涙を流した。
2019/07/04(Thu) 00:02
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