MEMO
◆お薦めが会うわけでは無い [追記]
その研究をしていたのは本当に偶然だった。
現在使用している化石燃料に代るエネルギーを研究していたときに偶然できた”ソレ”は人類にとっては活用できないものであったが、人類ではない”彼等”にとってはとても重要な代物であったと知るのはずっと先のことだった。
「・・・私に米軍からオファーが?」
何故だ?というかのように所長に問えば、彼は困ったように眉を下げながら答えた。
「米軍とは少しばかり所属が違っている。えぇっと、新設されたばかりのNEST部隊から、昨日報告のあった研究に関して話を聞きたいと依頼があってね」
忙しなく視線を彷徨わせながら額に浮かぶ汗を拭う所長を博士は冷めた目で見つめていた。
「その研究に関する資料は所長も目を通されましたでしょう?」
「あぁ」
「最終的に研究は凍結され、後にデータは消去されると聞いていましたのに・・・何故、私の研究をアメリカのNEST部隊とやらがご存じなのかしら?」
テメェ、金になりそうな研究を売ったな?
と、脅しを掛けながら博士が問えば、所長の顔が可哀想なくらい青くなる。
「(ここでこの所長を責めても意味が無いわね。私の研究が知られ、そして興味を持たれたのならば色々と厄介でしかないわ)」
苛立ちと不安を隠すかのように唇を噛みしめる博士の脳裏に浮かぶのは娘の事だ。
自分1人だけならば少しばかり危険な橋を渡ることも出来ただろうが、娘が一緒となるとそのような危険な事は出来ない。
「(あの人に・・・知られる可能性も高い)」
脳裏に浮かんだ冷酷な科学者の顔。
娘の実父である男が自分の研究を知ったのならば接触してくる接触してくる可能性が高い。
「・・・先方はなんて?」
「一度、君と直接話をしたいそうだ。君が望むのならば君を正式に雇っても構わないと言っている。これは良い話しだと」
「どこが良い話ですか?私には・・・全くもって良い話とは思えませんね」
外堀から埋めにきた事から、相手がかなりやり手だと判断した博士は所長に対して呆れたような眼差しを向けた。
2019/12/24(Tue) 01:18
[戻る]
[TOPへ]
[カスタマイズ]