もうひとりの主人公編 弐
□第拾壱話【どこの時代でも女性とは一緒ですね】
1ページ/5ページ
二人が目的の場所へ行くに連れ、人が増え始めている
今現在ではもはや、手を一瞬でも離せば飲まれてしまうだろう
『(うっ...邪魔ですね。大人の方に蹴られてしまいそうです)...す、すごいですねっ』
「...休日はだいたいこんなものだと思うよっにしても人が多い...」
ワイのワイの――
ガヤガヤ―――
「あっ見えてきた...あそこに行くんだよ?」
『えっどれですか?』
丁は吉良が指差している方へ視線を持っていく。
なんとそこには――――――
大きな大きな建物があった
敷地面積も見た目からして広そうである
『......わあ、すごいですねっ』
丁は大きな建物――――デパートに食い入るように見る
そして、丁が動くたびに手を握っている吉良が急に引っ張られバランスを崩しそうになる。という繰り返しだ
「ちょ、丁くん落ち着いて?手離しちゃうと、私とはぐれちゃうからね?」
『は、はいっ!!気をつけます』
丁は吉良の顔を見て、真剣な顔つきで言う
そして握られている手に目一杯力を入れ直す
「......甥っ子も最初はこんな感じだったなあ
『え?...甥っ子?』
またこの単語。
苛つく単語、
彼女は何故か口に手を当て、まずいと言わんばかりの顔をした
「う、うん...昔ねー丁くん位の時初めてだったのかな?すっごく大はしゃぎしててね。楽しかったなぁってね」
『......へエ』
その方といる時の方が貴方は楽しいのですか?
では、今いる私とは...?
私よりその方がよいと受け取って宜しいのですね?...って私は何を躍起になっているのでしょうか。
『......』
「と、とりあえず、最初は何を見に行きたい?」
丁ははっと我に帰ると、彼女を見つめる。
最初...まあ無難に生活をしていく上で大切なものでしょうね
『...そうですね。私の生活用品なんて、どうでしょうか?』
そう言うと、彼女は拳を天に突き上げ歩き出す
なんですか。その謎行動は、
「じゃあ早速いこっか!!!」
『...はい』
甥っ子...彼女が口にするたびに、痛むこれは一体?
丁は顔を俯かせたまま、吉良の手に引かれていった
途中、えすかれーたなるもので転けそうになったがまあ悪路を毎日行き来していた丁にとっては造作もないことであった
―――ここはどうやら3階らしい。
上に何やらぶら下がっているものに気付く
涼しい風でゆらゆらと揺れているそれはきっと案内板なのであろう
丁がぼーっとそんなことを考えている間も、彼女はずんずんと進んでいく
丁があるものに惹きつけられ、ぴたりと立ち止まった
『......これはなんでしょうか?見たこともない形状をしていますね』
丁が見つめているもの、それは歯ブラシである。
「これはねー歯ブラシって言って、歯をキレイにするものなんだよ?こっちが歯磨き粉だよ。歯ブラシの上に乗せて、しゃこしゃこと泡立たせながら磨けるんだよー
んで、こっちが液体状の洗浄歯磨きだよー...まあ歯ブラシと粉はセット――二つに一つって考えていいからね」
『なるほど...ここには色んなことに特化したものがあるのですね』
丁は無意識下で顎に手を添える。
...この国は本当に実に興味深いことだらけですね。
一体どのように発展すれば、こうなるのやら...
「色とか細さとかどれがいいかな?」
丁は歯ブラシコーナーをさらりと見終わると、ひとつ手に取る
その歯ブラシは、どこか青い色で澄んだ印象を持つ
棒の中に何やらキラキラしたものが入っている
『(?何か輝いていますね)これでいいです。』
「はいはい。これねー。」
吉良は丁から受け取ると、いつの間にか持ってきていたカゴに入れる
『それと...これはなんでしょうか?』
それはマグカップ。
絵柄は水色の水玉が淡く拵えられている
そして小さな可愛らしいイルカのシルエットも付いている
「これ?これはね、飲み物を注ぐための器みたいなものだよーマグカップって言うの。
...これ、可愛いね!!」
『...これ欲しいです』
丁はポツリと呟く。
すると、彼女はまぐかっぷとやらを取ると、同じ柄で薄い桃色のも取る
「じゃあ私はこれ買おっかな。ふふっ丁くんとお揃いね?」
「お揃い...」
吉良は桃色のまぐかっぷを片手に、丁に笑いかけてくる
その頬はうっすらと赤らめている気がする
「(...おそろい、何やらいい響きですね。)」
丁はバレないように、うっすらと口角を上げた
少し機嫌が治った丁は、次々と吉良を質問攻め&速攻モノを選び出していく
その動き、速さはまるで洗練されていた
「...すごい速さで決めてくね」
『...え?ぐるりと全体的に見た瞬間、目に付いたものを選んでいるだけですよ?...おかしいでしょうか』
丁はシュンとする。
まるで吉良にはやすぎぃ!!と言われている気分になったからだ。
実際もそうなのだが、
「い、いえ全く滅相もございません...素晴らしい仕分けです。はい」
『...何故私に敬語など?』
明らかにいきなりの不自然な敬語。
かなり不審である
「お、おほほ。お気になさらずじゃんじゃん選んでくださいませ〜」
『...(不気味です)』
丁はじとーっとした目を少しだけ向け、また選び出すのであった―――――――
しかし、気持ち悪いし、合わないことこの上ない
「おい、ナレーター。」
...実に品があり、美しい言葉である。
『...はふう』
何故か丁が溜息をつくのであった――――――――――――――はあ...