もうひとりの主人公編 弐

□第玖話【外の世界】
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――――――...丁はたちまちうきうきになる。





何故ならば、これからこの国の外へ行けるのだからだ





『(一体どんなものが見れるのでしょうか!!吉良さんのお宅でも十分過ぎる程なのですが、楽しみですね!!)』


「あはは!!なんか子犬みたいだね丁君はー」




丁はキラキラとした目で吉良を見つめる
その頭に優しく乗せられる彼女の手。

とても心地がいい






『...早く行きましょう!!!早く外に行ってみたいですっ』

「まあまあそう、焦っちゃいけないよ〜」






必死に宥めようとしてくる吉良。
そんなものじゃあ、私の好奇心は抑えられませんよ





『これが焦らずには、いられませんよ!!早く色んなものを見たい気持ちで一杯なんですから!!』

「き、気持ちはわかるけど...」





彼女は困った顔で見てくる
一体どうしたのでしょうか?







「ま ず わ!!今の格好から着替えないとね!!」

『っつ!!?』



いきなりビシリと丁を―――主に服を指差してくる
...え?




『...何故ですか?これではいけない、という事ですか?』

「そういうこと。...世のショタコン共が狙いにくるかもしれないから、着替えましょうねー?」


『しよた...こん?』





吉良はどこからかいきなりシャッと衣類を引っ張り出し、丁の前に出す





「そう。ショタコン。丁くんみたいな小っちゃくて力が無い子を誘拐するんだよ〜?」

『力ならありますよ!!今まで一人で生きてきてたので、戦うくらいならできますよ!!』





丁はそう言って腕に力をいれ、細っこい腕を見せつけてみる
どうですか!!筋肉あるんですよっ

ふんと鼻なんかも鳴らしてみたり、






「だーめっ怪我なんかしたらお母さん、泣くからね?」




あっさりと拒否されてしまった。
ん?...固定ですかね?





『あ、母親固定なんですね』

「そうよ。お母さんとお呼び。」


『はい。吉良さん』



「お母さんだってばあー」






吉良ががっくりと肩を落としたみたいだ。
拒否された腹いせだ。今の丁の心の中は清々しかった―――――――











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『......』

「んー...まあこんな感じでいいかな?」






丁は自分が今、身に纏っている衣を見回す
変な色をした変な丈のなんだろうか?






『...変な衣ですね』

「慣れなさい。」


『はい。お母さん』





丁はハッとする。
無意識にお母さんと紡いでいたことに気づく

そして、吉良を見ると、凄いこう...表現し難い鋭い目で見られていた






「...それでもやっぱ大きいかなー?まあいいかー」

『(...いいんですか。色々と思考が雑ですね)』





丁はシラーっとした目で彼女を見る





「でもまあ、まさか甥っ子の服が一部あるとは思いもしなかったわ...」

『おい...こ?』





丁の眉が一瞬跳ね上がる
遠い昔?最近?はたまたどこかで聞いたことのある、腹の底が煮えくり返りそうな単語。







「んーまあ、端的に言えば私の身内の人かな?これから丁くんのお友達になるかもしれないよ?どうする?」





更に何故か丁の心の奥が煮えくり返る。
と言うか、ズキズキと痛み出した

彼女の今の顔はあえて、見なかったことにしておく






『...別に私からは何もしませんよ。アチラから親しくされてきたら、私もするだけですので、』

(絶対にする気は毛頭も御座いませんがね)






丁は何故か見知らぬ甥っ子に対抗心を燃やしていた
しかしもちろん、彼女には悟られぬよう。




「そ...っか。でもまあ、丁くんには私がいればいいもんねー?...ねーーーー?」


『あ、は、はい...。』






いきなり何かを振られ、しどろもどろになる丁。
一体何を話していたのだろうか...


すると、彼女は急に壁に貼り付けてある丸い物に目を見やっている
あれはなんでしょうか?






「んーまだお店が開く時間じゃないけど...何処か気分転換にぶらぶらしよっか?」





すると吉良は急に此方に視線を戻す
ぶらぶら...?
行散、でしょうか





『...よく分かりませんが、外に出るということで?』

「そうそ!!おっさんぽおっさんぽたーのしーなー(はにわのような目で笑顔)」





丁にはその姿が楽しそうなものに見えたような気がしなくもない
...この方は大人のようなお子様なのですね。

丁にとってのはにわは見慣れたものであろう





『...吉良さんの頭はいつもお花畑になってそうですね』




ジト目で彼女を見る。
下手したらこの人、縄で足引っ掛けられても何が起きたか気づかなそうですね...





「それ馬鹿にしてるよね?絶対馬鹿にしてますよね?」

『では、早速いきましょうか!!!』


「無視?私の思いを無視っちゃうの?お母さん泣くよ?」




(泣けばいいじゃないですか。なんて言いませんけどね)





丁は横目で吉良を見る。
その目は完全に馬鹿にしたものであった



















おそらくだが、吉良は膝カックンされても倒れるだけで、辺りを見回していそうだ。――――――――――
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