もうひとりの主人公編 弐

第拾壱話【どこの時代でも女性とは一緒ですね】
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丁たち二人は粗方日用品を買うと、またエスカレーターに乗り込んでいた






『次は何処へいくのですか?』

「ふっふー...次はお待ちかね。お布団一式だよ!!」


『ああ、そういえばそれが主役のようなものでしたね。』

(正直、今となってはいらないとか思ってたりするのですがね...)





丁は内心そう思うが、昨日言ってしまったからには選ぶ他ない。
正直あまり乗り気ではない




『......』

「あ、ほらついたよー?きっと丁くん驚くと思うよ〜」


『驚く...ですか?』




こてんと小首を傾け、エスカレーターの先を見つめる。
驚くとはなんでしょうか?...散々驚いてきているのですが、





エスカレーターを降りると、そこには―――――


さまざまの大きさの吉良の家にあるような布団がずらりと並んでいた
その光景はまさに、圧巻。壮大。







『ふうおおおおおっ!!!!!!』

「さあさ!!君の好きな寝具を存分に選びたまへ!!!」




吉良は片腕を大きく広げ豪語してくる
まるで彼女の言い方は、自分が作ったと行っているような感じ。





『なんですかこれ!!!横に長くて大きいですね!!』




丁が指差すは、ダブルベッドである。
二人が寝た(意味深)ベッドと同じ大きさのものである




「それはダブルベッドって言う5〜7番目辺りに大きなお布団だよー」

『(これよりももっと大きなものがあるということですかね。)では、一番大きいのはどれですか?』





丁がそう言うと、吉良は辺りをキョロキョロと見回し始めた
流石にないですよね...?





「んー...っとあ!!この大きいのかな?これが一番大きいキングのダブルだよー」


『...想像以上に大きいですっ』






彼女はだいぶ離れた場所から言っているというのに、吉良が指差すそれは遠くからでも分かる程大きかった

一体私を何人分寝転がれるのでしょうか?





「...まさか丁くん、これほしいの?」

『えっ?』





丁は余りの唐突なことで、声が上ずった。

そしてどう言っていいのやらか分からず、オドオドと眉を八の字にし焦っている
これ?これを私が...?





「欲しいなら買ってあげるけど...部屋、入るかわかんないよ..」

『っこんなに大きいのは流石に、いりません!!...なんだか落ち着けない気がします』






丁がそういうと、賛同してくれたのかうんうんと二回頭を縦に振った






「その前に、ベッドタイプがいいの?それとも
普通のお布団?」





丁はふむといい、顎に手を添え下唇を弄ぶ仕草をする






『...分かりません。確かに慣れているといえば、普通のでしょうけど...ベッドが凄く気になりますっ』


「そっか。じゃあ今度はシングルコーナーに行こっか?...流石にダブルとか丁くん一人で寝るには、大きすぎる気がするよー」




『は、はい...(確かに大きすぎますが...――――)』





吉良はシングルベッドが売られている場所への道を進む
途中丁は、彼女にそう言われ一瞬だがムスっとした顔をすると力なくこうべを垂れた

...決まりました。私の夢はあれに眠る資格のある大人になることでしょうかね?






「......(一緒に寝てはダメなのでしょうかね)」

「んー丁くんならこのくらいかなー?ちょっと大きめに考えてもいいかな?」






色んな布団を見つめる彼女を、丁はただ静かに見つめている
今更言えない、選ぶしかない
また一緒に寝たい気持ちが大きい

するとふと、彼女は此方に顔を向けてくると丁の元へと戻ってくる




「あれ?丁くんどうしたのー?もう疲れちゃったかな?」


『......』





丁は別に疲れているわけではない。
なので、首を左右横に振った

そしてしゅんとした上目遣いの目で彼女を見つめる
...そういえば、私は一体どこで寝るのでしょうかね





「...?一体どうしたの?なんだかちょっとご機嫌斜めなのかな?」

『......(寝るときくらい、離れたくない。と言うのは甘えなのでしょうか)』


「おーい。言葉発してくれないと伝わらないよ?」





彼女は優しい手つきで頭を撫でてくる
丁はこの手が好きだ。

まるで大きく包み込まれている感覚にさえ陥るのだから、
...何か安心する






『(...聞くべきですよね。)...部屋とは、一体何処で寝させるのですか?』

「え?そうねえ...まあ丁くんが嫌じゃないなら私の寝室かな?」





よかった...聴いてよかった。
もし部屋が別々で一人で眠るとなっていたら、かなり不安な夜を日々送らなければいけなかった
正直、この二日間で丁自身さえも気づかぬうちに
かなりの寂しがり屋になってしまっていた





「嫌なら、来客用のお部屋にしてあげるけど?」

『...っでは吉良さんの、寝室でいいです』





丁は勢いよく顔を上げ必死で訴えるように言う。
...何故こんなに必死なんでしょうか。
自分でも不思議です





「...一人は寂しくなっちゃった?」

『......(何故わかったんですかね)』




丁はまた顔を俯かせたあと、目線だけちらりと彼女を見る





「あははっ大丈夫だよ?私は丁君の目の前から消えたりしないから」

『.......(そんな保証は、どこにもないのによく言えたものですね)』


「...よしっじゃあ、指きりしよう!!はい、小指出して?」




『え?...は、はい..』





余りの突然のことで、丁は目を見開く。
そして言われるがまま、小指を突き出した

そして吉良は、丁の小指をすかさず自分の小指に絡め取り何やら歌いだした―――――






「ゆーびきーりげーんまん♪うーそつーいたーらはーりせんぼんのーますっゆびきった♪」


『...切った』





丁は訳も分からぬまま、小指をまた離される
...凄く名残惜しい




「これはね、おまじないだよ?これで私は丁くんと離れることはもうないよ!!」

『おま...じない..』




まじない。人を呪うことにもできる または祈祷 人を幸せにもできるもの





「そう、二人だけのおまじない♪丁くんも破っちゃダメだからね?」

『......はいっ!!』





この場合の呪いは、きっといいことなのでしょうね。
...二人だけ、
自分自身でも分かる。口元が綻んでいくのを






「よしっじゃあ...ベッド買いに行こっか!!」

『...はいっ!!』





彼女は自分の一歩先を歩く
それに対し丁は、たたたと走った後吉良の手を掴む。
そしてぎゅうと強く強く握り締め、隣を歩くのであった―――――――――
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