もうひとりの主人公編 弐
□第拾参話【明日談義?】
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『...な、なんですかいきなり。目が覚めたではないですか』
「ご、ごめんね...。でも起きてくれてよかったかも」
『...一体どういうことですか?』
彼女はそう言うと、私のそばまで近づきベッドをギシリと音を立たせ座ってくる
起きてて良かった...?一体どういう意味でしょうか
「じ、実はね...、明日から私朝から夜までいないの。明日からだけじゃなく5日間ずっと」
『...何故でしょうか?』
彼女は何故か深呼吸をする
私は彼女が話し出すまで、暫く待ってみます
...何か緊張するようなことなのでしょうか?
「...仕事って、分かるかな。」
『...流石に分かりますよ。私を馬鹿にしておいでですか?田植えや手伝い等のことでしょうか?』
何か重労働でもするのでしょうか?
この季節ですと、田畑はできないと思うのですが...
女子で狩猟?
彼女はそれ程強いお力をお持ちなのでしょうか?(物理的な意味で)
「あー...合ってるには合ってるけど、私が言う仕事はね、働いてお金が貰えるの。
その働く種類も色々あって、私は主にですくわあく――おおえる(OL)と言われてる仕事をしてるの判るかな?」
『......はい(明日調べましょう。)』
「それで、私は別の場所――この家以外の場所でお仕事しなきゃいけないの。毎日ね」
『......』
そんなもの、どのお仕事でも言えることでしょう?
...1日何時間と、慣れた方と離れていなければいけないのは
..ですが、なんとなく私の村に居た幼子たちの気持ちがわかった気がします
何故お手伝いで忙しい私の邪魔をしてきたのかを
こっそりふうと息を吐く。
「そ、それでね...丁くんにはお留守番を『分かりました。この家にいればいいんですよね』...そうね。家の中なら何してもいいから」
『......(何してもいいと言われましても、わからない物ばかり過ぎて恐怖で触りたくもありませんよ)』
とりあえず、頷いておく。
彼女をあまり心配させたくはありませんのでね
...ですが不安なものは不安なのですがね
彼女が居ぬ間は、一体どうしましょうか...
「――――、ね!!」
『(どうしましょうか...せいぜい明日は吉良さんの口から出た理解不能な単語を――)...はい』
明日のことで色々と考えるが、やはり一番は日常的にしていた"手伝い"ができないことが、不安である
何かを彼女は言ってるが、一切気にしない。
「...ごめんね。ちゃんと言っておけばよかったね」
『いえ、お気になさらず...ご迷惑はお掛けしない様にします。
私のことは、気にせず明日からのお仕事に集中してください。
私なら大丈夫ですので、』
「丁、くん...」
寂しくない、と言えば嘘になります
ですが、働くのであれば仕方のないこと。
人の仕事を奪ってはいけないと、学んでおりますからね
とやかく云うつもりはございません
「最初に言ったと思うけど、私は貴方の家族になりたいって言ったんだけど。忘れた?」
『...覚えております』
『ならなんで、他人事みたいに言うの?私と居るのが嫌、と受け取っていいのかな?』
何故そうなるのでしょうか?
誰もそのようなこと、申していないというのに。
ではなんと仰ればいいのですか?
貴方を困らせるようなことしか言えませんよ
「何か言いたいなら言って。言葉にしないと人には伝わらないよ?」
『......(何故、なぜこの方は私を簡単に家族等と言えるのでしょうか)』
普通、血の繋がっていない者を簡単に身内なんかに入れるはずがない
一介の召使を何故この方は身内にできるのでしょうか?
昨夜は疑わなかったのですが、今になれば不可解です
「...今日はもう別々で寝よっか――『考えていたんです』...何をかな」
『...考えていたのです。何故吉良さんはただの召使で見ず知らずの人間で、何処に住んでるのかも不明な私に家族だ等と言うのかと』
ふと気づけば、何処かへ立ち去ろうししていた矢先だったようです
彼女が行ってしまう。どこかへ行ってしまう...
立ち去ろうとする彼女を引き止め、じっと見つめる
よかった。止まって下さいました
『......なんで、ですか?』
「......」
「...なんで、か..私にも分かんない。としか言えないかな」
『...えっ』
彼女はくるりと此方に振り向いて下さいます
驚きました。
一切の考えなしでの言葉だったのですね
...この方は一体何を考えているのでしょうか。色々と怖い
「正直、なんだか君を見ていると懐かしくなるのよね。本当の家族以上に"家族"っていうか他人とは思えないの」
『...良く分かりません』
「うん、私も分かんない」
「『............』」
...貴方が分からないのであれば、判るはずもありません
ですが、確かに彼女の不可解な言葉には同意できます
この方といると、不思議と懐かしい
「あ...そういえば、丁くん晩御飯後に言ってたじゃん。ここが懐かしいって」
『え?そんなこといってましたか?』
「うん。今頃きっとナレーターが確認しn{ストーップ!!メタだめェ゛}...」
今なんか変な声が聞こえませんでしたか?
え?気のせいですか?
...そうですか
『.........そういえば、そうでしたね。ですがそれが何か?』
「私も丁くんを見ていると懐かしい気分になるのよね。なじみやすいと言うか、」
『...確かにそうですね。私も吉良さんの傍に居ると落ち着きますし、何か懐かしいような...』
うーん...不思議です
「『...なんなのかしら(でしょう)、これ』」
「『...............』」
あ、被さってしまいました。
も、申し訳ございません...
「...とりあえずもう寝よっか。」
『はい。(明日もお早いですからね。賛成です)』
「...ところで、別々がいい?」
何を今更...
貴方の顔をみれば、わかりきっています
...まるで、一緒に寝るよね?と言わんばかりです
勿論答えは―――
『却下でお願いします』
「だよね。」
吉良さんは、扉付近の壁に向かい何やらカチリと音を立たせます
すると、先程まで明るかった内部が一瞬にして橙色の明かりに変わりました。
少し薄暗い感じでしょうか?
あ、布団に潜り込んできましたね
「じゃあ、おやすみなさい」
『はい、おやすみなさいませ』
ぽっぽ〜♪
数時間後
『(眠れない...)』
隣を見れば、すやすやと眠っている吉良さん。
...羨ましい、実に羨ましい
『(彼女に抱きついて寝れば、その睡眠をお裾分けして頂けますかね)』
まあ、抱きつくといっても衣を掴ませて頂くだけですが、
...暖かい。程よい感じに暖かいです
『(...お休みなさい。)』
うとうと。
懐かしい匂いと温もりを感じながら船を漕ぎ出す丁なのであった