もうひとりの主人公編 弐

第拾陸話【不思議な感情と。】
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『......あの人と私、吉良の中ではどちらが下ですか?』

「アイツに決まってるじゃん!!私は何よりも誰よりも丁くんが一番大事だよ?」






ホッと何故か安堵する
何故私は安心してしまったのだろうか。

っとそれも束の間、両腕を掴まれぐいっと後ろへ後退させられる

恥ずかしさと不安が入り混じった顔を彼女が見つめている

透き通った目で私を見つめている
そして彼女は優しく頭を撫でてくださる

...この手つきが私はとても好いております
何故ならば落ち着くから








『...本当、ですか?』

「本当だよ。私は丁くんがだーい好きなんだもん!」


『(まだ出会って日が浅いのですが...っ!!?)んむぐっ』







最初は戸惑った。それは突然だったから

彼女は頭を撫でていたかと思うと、いつの間にか私の体を力強く抱きしめていた
どうしたものかと一瞬狼狽えたものの...
彼女の温もりが、徐々にまた私の緊張を解していく

震える手でそっと...恐る恐る、でも離れないようにぎゅっと抱きしめ返す







「だから、嫌な気持ち―――モヤモヤした気持ちになったらちゃんと私に言うんだよ?私までモヤモヤしちゃうから、さ」


『...はい。』







家族というものは、そういうものなのですか?
私が思っていることを――――嫌だと思うことをお話すれば良いのですか?

そしたら貴方はまた、いつものように微笑んで下さるのですか?

...私にそのようなことが、できるのでしょうか?









「...よしっじゃあもうご飯食べよっか?」

『...もう少し、もう少しだけ』


「もー甘えん坊さんめー」






もう少しだけ。時が許す限りこうして居たい
彼女の暖かな温もりをもう少しだけ―――――――

と目を閉じ、落ち着こうとしたのもまた束の間
体が急に浮上した
足は床から離れ、聞こえるのは彼女が歩く足音と笑う声のみ







『わっ!!?な、何するんですかいきなりっ!!』

「丁くんを強制連行しまーす」


『(っ負けて、なるものか...)』

「ちょっそ、そろそろ離そうね?」


『まだ嫌です。離れ等ありません』







ガッチリと彼女の首に回した腕がブラリブラリと体と一緒に揺れる
そして、柔らかい椅子に座らされてもなおしがみついたまま






「〜〜〜〜っ丁くん覚悟!!!」


『えっ!!!??(...っう゛ァわ!!?)』





彼女は丁の両脇腹に手をあてがい、擽ってくる
それはどんなことでも、どんな罰でも耐えていた丁でさえも我慢が出来ないほどの衝撃であった
全身から湧き上がる気持ち悪さと、感じたことがない感覚

瞬時に手を離し、脇腹を守る








「ふいーやっと離れてくれた。効果覿面ですな!!」

『(っしまった!?)なっ!!狡いです!!卑怯ですっ』


「ふふんっまあまあ、ソファに座ってて?ご飯作ってくるからー」








流石にこれは納得がいかない
卑怯極まりない上、今でも気持ちが悪いです

...一体この全身から栗立つような、何かが這っているような感覚はなんなのでしょうか?





『...はい。(あ、治まりました。)』








感覚の良い音が料理場から軽快に聞こえる
彼女が夕餉の支度をしているのだろう

...しかし、座っていろと言われましても、お暇過ぎて何をすれば..あ、読み物でも漁りましょうかね







「あれ?丁くんお昼何食べたのー?」

『(あの失敗したものは黙っておきましょうかね)その冷蔵庫?に入ってる、名前は確か..ようぐると?と言うものを食べました』


「あ...そうなんだ。」





先程までの彼女の元気が一変、かなり低い声へと変わったのが見て取れたのであった





『?(駄目だったのでしょうか...?)』
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