短編
□ねずみの嫁入り
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「ジェームズ、ど、どこだろ…」
『んー…あ!あそこ!あそこじゃない?』
サヤが指さしたのは森の中にある小さなお花畑。
そこにジェームズと赤い毛並みをした牝鹿がいるのが見えた。
『行ってみよ!』
そう言ってピーターの手を掴んで歩く。そのことだけでピーターはドキドキした。
近付くと二人の話し声が聞こえる。
「あぁリリー!君はその名の通りこの百合のように綺麗だ…!でも、この綺麗な百合の花束も君を前にしたら霞んでしまうね!」
「その眼鏡、度が合ってないんじゃないかしら?早急に替えることをお薦めするわというか私がぶち壊して差し上げたいわ」
「僕のこと心配してくれているんだね…!でも大丈夫さ!この眼鏡は君だけにしかピントがいかなくなってるから、他の物なんか目に入らないんだよ」
「目だけでなく頭もおかしくなっちゃったのかしら。もうお手上げね、ポッター」
『おーい、ジェームズー!』
「ん?あ、サヤー!ピーター!」
『ごめんね、お取り込み中のとこ悪いんだけど。ジェームズ、私のお婿さんになってくれない?』
「えぇ!?」
「え…っ!」
「だ、だから、サヤ!説明しなきゃダメだって…!」
またピーターがかくかくしかじかと説明する。
「で、強い人をお婿さんにしなくちゃいけなくてリーマスのところに行ったら断られて僕のところに来たと」
『そうそう。でも、貴方には期待してないから。さっさと貴方より強い人言いなさいよ』
「ひどい!僕は眼中に無しってことかい!?」
『だってリリーがいるじゃない』
後ろを指差すと少し離れたところで心配そうにこちらを見つめるリリーが。
どっきゅーーん
そんな音が聞こえてきそうなくらいジェームズは目をハートにして
「そうだよね!僕にはリリーがいるからね!むしろリリーしかいないからね!んー…そうだなぁ。僕より強いって言えば、シリウスかな。シリウスの怒った時のあの睨みは僕も勝てないかも!じゃあ僕はマイスウィートハニーが待ってるからもう行くね!バイバイ二人共!」
ヒラヒラと手を振りリリーの元へ全力疾走。そして
「リリーっっ!!!」
「な、なによ!ちょっと!離れなさい!ポッター!」
「なんて可愛いんだ君は!」
「話を聞きなさい!!」
リリーに抱きつくジェームズと顔を真っ赤にして照れながら怒るリリー。なんやかんやでいい感じの二人を見て
『…ご馳走様です。行こうか、ピーター』
「…そ、そうだね…」
二人はシリウスの元へ向かった。
ーーーーーーー・・・・
なんでだろう…。
サヤが彼にお婿さんになって欲しいって頼んだとき胸が痛くなった。彼とサヤが2人で話しているのを見ると心配でいてもたっても居られなくて。二人で楽しそうに話しているのを見ると胸が締めつけられるようだった。
この胸の痛みは何?
でも、彼がサヤと別れて私に駆け寄ってきたとき何故だか嬉しくて泣きそうになったの。
いつも付き纏われて嫌だったはずなのに、
離れていってしまうと考えると嫌で嫌で仕方なかった。
この気持ちは何?
…なんとなく、心の奥では気付いてはいるんだけど、
「リリー♪」
なんだか悔しいから
「だから、離れなさいって言ってるでしょ!!」
まだこの気持ちは伝えてあげない。