短編

□眠るきみに秘密の愛を
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「あ゛ーー…やっと終わった…」

昼間、廊下で悪戯を仕掛けていたら
珍しくヘマをして、捕まってしまった。
今は罰則からの帰り道。

マグル式で消灯時間ギリギリまでトロフィー磨かせられたシリウスの機嫌は最高に悪かった。

「くっそ!!あれもこれも、全部あいつのせいだ…!!」

あいつが逃げる時に俺を囮にしたりするから…!

思い浮かぶのは、ごめん!と謝りながら足を引っ掛けてきたひとりの少女。

あれで俺はつまづいて転んで、フィルチに捕まった。

…思い出したらムカついてきた。

明日どんな仕返しをしてやろうかと、考えながら談話室へ向かう。
太った婦人の前で合言葉を言い、中に入った。
当然、消灯時間前なので誰もいない。…はずだった。

「…サヤ?」

暖炉の前のソファーに今、頭に思い浮かべていた少女がうずくまっていたのだ。

近付いてみるとすーすー寝息をたてている。

「寝てんのかよ…」

とても気持ちよさそうに寝ている。その無防備すぎる姿に若干の苛立ちを覚える。

「無防備すぎだろ…ちょっとは危機感持てっつーの」

その頬に自分の手を当てる。
フニフニと気持ちいい。次にその頬っぺの肉をつまんで軽く引っ張る。

『うう〜〜〜…』

起きるかと思ったが、むにゃむにゃと再び夢の世界へ旅立っていって全く起きる気配はない。

このまま置いて行くのも気が引ける。
なので、起きるまでコイツの顔で遊ぶことにする。
昼間の恨みだ、このやろー。

つまんだり潰したり引っ張ったり変顔させたり…。
こんなにやっても起きないサヤにため息をつくと、

『…んぅ…』

といってサヤが寝返りを打つ。その声がやけに色っぽくて、ゾクゾクした。

右手でサヤの頬を包み込む。すると、無意識なんだろうけど、頬をすり寄せてくる。そして、

『…ん、…シリ、……ウス』

と、にやけながら寝言を言う。

その顔にプツンッと一瞬理性を失う。

「…好きだ…、サヤ」

溢れだした胸の内の想い。言ってしまったら今の関係が壊れそうで言えなかった、秘かなる想いが静かな空気に溶けていく。

サヤの赤い唇に顔を寄せる。あと数センチ…。
もう少しで触れ合う、その時

『…んんー……!』

ちゅっ

サヤが急に顔を動かし、当たったのは鼻の頭。

「〜…っ!こいつ…!!」

何も知らないサヤは未だ無防備な寝顔を晒して寝ている。

しかし、今ので理性を取り戻した。

「何をしようとしてたんだ…」

寝込みを襲おうなんて、ありえねぇ…。

キス出来なくてよかったと思う。あのままいったら本当に何をしでかすかわからなかった。

まだ起きる気配のない彼女を見て、自分のローブを脱ぎ風邪を引かないように上からかけてやる。

そして、ちょっとした悪戯を施して自分の部屋へ戻った。



眠るきみに秘密の愛を

眠るきみにしか、本当の気持ちを明かせない





(「おっはよー!!…あれ?サヤ?…ちょ、顔、凄いあははは!!」)
(『ふぇ?……な、なんじゃこりゃぁぁああああ!!』)
(「すごい…、目の上に目があるみたい」)
(「額の鶏肉って何かしら?チキン?」)
(「それで、大体の犯人の検討はつくよね…」)
(『こんの…、シリウスーーーー!!!!』)
(「ケッケッケ、昨日の仕返しだ!!」)




title by.確かに恋だった 様
 

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