短編
□ねずみの嫁入り
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【ヒロインとピーター】
----鼠の嫁入りパロディ----
《『もぉー!ほんと、ピーターって私がいないと駄目だよね!私が居なくなったらどーするの!』》
《「うぅ…、そ、そんな事言わ、ないでよぉ…」》
《『もう…仕方ないから大きくなったらピーターのお嫁さんになって、ずーっと面倒みてあげる』》
《「ほ、ほんと?」》
《『ほんと!約束!』》
そう言って笑いながら指切りをした
君はもうあの約束を覚えてはいないのかな…
ーーーーー・・・・
『お父さま、唐突で悪いんですけども…』
「なんじゃ?可愛い可愛い娘の事ならなんでも聞いてやるぞ」
白く長い髭を蓄えた、父と呼ぶには少し…いやかなり歳のいった老人は蒼くキラキラとした目を細めて娘を見る。
『私、お嫁に行きたい』
本当に唐突すぎた。話を聞いていた八割の人はその場で吹いた。彼女の幼馴染み、ピーター・ぺティグリューもそのうちの一人だった。
「へ!?サヤ!?」
『何よ、ピーター』
「お、お嫁って…!?」
「なんじゃ、サヤ。お主に、もうそんな相手がおったのか」
サヤの父、ダンブルドアはふぉっふぉっふぉっと高らかに笑っているが、目は笑っていない。
『いないわよ。そんな人』
「えぇ!?じゃ、じゃあなん、で!?」
サヤの言葉に再び驚く。
『なんでって…、私もう18歳なのに恋人の1人すらいないのよ!このままだと私、一生独り身な気がするの。だから、今!この一番可愛い時に!見つけたいの!ねぇ、お父様協力してくださらない?』
うるうると潤んだ瞳で上目遣いをされてしまってはさすがのダンブルドアも断れない。
「わ、わかったわかった。協力してやろう。じゃが、1つ条件がある。可愛い可愛い娘をやる男なのじゃから強くなくてはならぬ。それが条件じゃ」
『…わかったわ』
そうして、サヤはピーターを連れてお婿さん探しの旅に出かけた。
『強い、といえばそうねぇ…。狼のリーマスなんてどうかしら?』
2人はリーマスが住んでいる森に赴く。
『リーマスー!いるー?』
「あ、サヤ。と、ピーター。どうしたの?」
『あのね、唐突で悪いんだけど。私のお婿さんにならない?』
「ふぁっ!?」
「あ、えーっと、ね、詳しく説明すると…」
かくかくしかじかとピーターが事の始まりを説明する。
「…なるほど。それで強い人をお婿さんにしなくちゃいけないんだね」
『そうなの。リーマスは狼だし強いからお婿さんになってくれないかなーと思ってやってきたんだけど。どう?』
「んー…なりたいのはやまやまなんだけど…、僕より牡鹿のジェームズの方が強いよ?」
『え、そーなの!?あんなへらへらしてるのに!?』
二人で驚くとリーマスは苦笑して
「普段はあんなのだけどいざって時は誰よりも強いと思うよ。何より僕の恩人だから」
そう言ってにこりと笑った。
『そっかぁ。じゃあ今度はジェームズのところに行ってみるよ。ありがとう、リーマス』
「ううん。こちらこそ。じゃあ、気をつけてね…。あ!ピーター、ちょっと…」
手招きされたピーターはリーマスに近づく。
すると顔を寄せて耳打ちされた
「(はやくアピールしないとサヤ取られちゃうよ?)」
「え、えぇぇええ!!??な、なななんでし、知って…!」
「(しぃーっ!静かに!見てたらわかるよ。…頑張ってピーター)」
と言ってパチンっとウインクをした
『ピーター?行くよー?』
「あ、う、うん!今行くよ!」
振り返るとリーマスがニッコリと笑いながらこちらに向かって小さく手を振っていた。
おそるべし狼。
ーーーーーーー・・・・
行ってしまった。
サヤたちが消えていった方向をじっと見つめる。
…本当は頷いてしまいたかった。
強い人と言われて、真っ先に僕のところへ来てくれたのがとても嬉しかった。
でも…
「僕は狼だから…」
いつ君を襲ってしまうかわからない。傷つけるかもしれない。
そう思うと承諾することなんて出来なかった…。
「好きだったよ…サヤ…」
そう呟いた狼は独り空を見上げ目を閉じた。