短編

□人魚姫
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大昔、深い深い海の底に【人魚国】と呼ばれる、人魚達が住む大きな王国があった。
その国は3つある海の全ての人魚達を統べる場所であり、一人の聡明で立派な王が治めていた。その名を、ダンブルドア国王という。

そんな国王には、娘が5人いた。

一人目の娘は誰よりも聡明で
二人目の娘は誰よりも勇ましく
三人目の娘は誰よりも温厚で
四人目の娘は誰よりも美しい

そして最後の末っ子に生まれ甘やかされてきた五人目の娘、サヤは誰よりも悪戯っ子だった。



『お父様ー暇ですー』

「だからといってわしの自慢のヒゲをむしるのはやめておくれ」

父である国王の髭で遊ぶのは当たり前。


「わあああ!!」

『あっはっは!!引っかかったー!捕ったどー!あははは!』

「サヤ…!面白いものがあるって聞いたから来たのに〜…」

『面白かったでしょ?この落とし穴。昨夜一晩中掘ってたの』

「一晩中!?それでこんな深いの…」

『はぁーあ。面白かった。じゃあピーター、頑張って脱出してね♪』

「え?ちょ、ちょっと!サヤ!助けてよぉ〜…!!」

幼馴染みでビビリなピーターを落とし穴に嵌めたまま放置したり

「・・・なんだ」

『別にー。見てるだけ』

「ならば向こうにいけ。気が散る」

『ぶー。そんな言い方しないでもいいじゃない』

「フンッ・・・。…次に、バイアン草のエキスを…」

バーーーーーーーン!!!

「くっ…!この…!悪戯娘が!エキスをざくろ液とすり替えたな!」

『あはは!気付かなかったセブが悪いんだもんねー!』

薬の調合をする城の薬剤師セブルスの邪魔をして爆発させたりと、毎日誰かしらに悪戯を仕掛けていた。



そんなある日、お城の人達に悪戯を仕掛けてもつまらなくなってきた。
毎日毎日悪戯するものだから、皆何かしらの対策を取るので、仕掛けるのが難しくなってきたのだった。
ただし、ピーターを除いて。

『ピーターだけじゃつまんないなぁ〜。もっと面白いことないかなぁ〜』

そうして1人、城のてっぺんにある塔の小部屋から顔を出し、ため息をついた。

今、サヤは、昨日ピーターへ仕掛けた悪戯に対するお仕置きを受けていた。
ピーターを驚かしたあとめっちゃくっちゃに暴れ周り(自覚はない)、それはもう、鬼さえすっ飛んで逃げるような怒りようでお母様にこっ酷く叱られた上に三泊四日で塔に閉じ込められることになったのだ。

『・・・はぁーあ。暇だなー・・・』

ぼーっと遥か上にある海面を見つめる



一番上の姉上に聞いた事によると、海の外には“リクチ”があって、そこに“ニンゲン”という生き物が住んでいるらしい。
その生き物は上半身は人魚と似ているが、二本の脚を持ち海に潜ると息ができないで死んでしまう不思議な生き物だと。

サヤが何度も姉上達にせがんで話してもらった、“チジョウ”に初めて行ったときの話は空覚えで言えるほどに覚えている。
姉上達が初めて行った“チジョウ”は一年に一回のお祭りの時で、至る所で陽気な音楽が流れ、踊り子達が華麗に躍り、それはそれはとても賑やかで、煌びやかで、素晴らしいものだったらしい。

その話を聞いてから好奇心旺盛なサヤは海の外へ行ってみたくて仕方なかった。

彼らはどんな言葉で話すのだろう。どんなものを食べて生活するのだろう。2本の足って扱いづらくないのだろうか。

そして・・・、

【「ニンゲンは私達のこと伝説上の生き物だって思ってるらしいのよ」】

姉上がニンゲンに見つかったとき、大騒ぎになったとか。

『ニンゲンを驚かすのってとっても面白そう!!』

サヤの悪戯心に火がついたのだ。




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