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「っつ!!!なんだこれ...!!!
くそあちぃ!!!」
「あーもーだから気を付けろって言ってんのに!!!」
「く...、だって副店長の人、普通にさわってっから....」
「副店長の人じゃなくて、菅原さん!!!
菅原さんは俺らと違って慣れてるからいんだよ。はい、濡れ布巾。」
「.........。」
納得がいかないと、ぶすっと顔をしかめる影山を日向がどんまい!となだめている。
いやいや、それは無いだろう日向、と菅原は苦笑いを溢した。
『いいか?
まずこの粉をこの容器にぶぁあっ!ってしたら、菅原さんがあっちいお湯びゅってもってくっから、固まった粉の塊をくるくるっひゅっ!てすんだ!
分かったか?』
以上。影山に対する日向の団子の作り方説明だ。
わかるわけ無いだろう。と菅原はうんざりと肩を落とす。
が、負けず嫌いが発生したのか、はたまた分かりませんと言いたくなかったのか、「おうよ。」と淡々と返事を返した彼を信じて作業を開始してみればこの様だ。
生地を手にする前、日向は確かに
「気を付けろよ!気を付けろよ!!?」
と連呼していたはしていたが、素人からしたら何に気を付ければいいかなどさっぱりだろう。
菅原は何も分からず近寄ってきた影山に悪いことをしてしまったなと反省をしつつも時間が惜しい今、団子を丸める手を休めはしない。
次々と形を成していく白いたまに、影山は火傷をおった掌を拭いながらその姿を眺めていた。
「おい、おい。」
「あ?何だよ。」
「これ、食いもんなのか?」
「おう......え!!?影山団子しらねーの!?」
「しらね。」
「うわぁ〜、まじかよ。」
人生の半分損してるわ〜。と呟く日向が視界の隅で殴られている。
しかし、そんな行動も影山からしたらきっとじゃれあいなのだと、菅原は喧嘩を止めることを諦めた。
きっと店長の彼が戻ってきた際に散々言われてしまうだろうが、その時はその時だ。
一先ず今は、今日中の団子数ノルマを達成することだけを考えなければならない。
ペースを一人もくもくとあげていると、ようやく影山の重い一発から立ち上がった日向が隣へ駆け込んできた。
「すいません管原さんっ
遅れましたっ」
「おう日向。小競り合いもいいけど、ほどほどにしとかな後で帰ってきた大地に散々言われるべ?」
「...!!!う、す!!!」
明らかに動揺して生地を取り落とす日向の背中をバシバシ叩いてやる。
まぁ、まだ見られてないし俺も言うつもりはないからセーフな。と小さく告げれば、彼はあからさまにほっと息をついた。
さて、ラストスパートだ。
二人して団子の数を颯爽と増やしていくうち、鋭くこちらを伺う視線とかち合う。
未だ生地に手を触れることの出来ない影山だ。
どうやら先程の熱さが既にトラウマになってしまったらしい。
なんとか生地を掴もうとしている姿は威嚇をする黒猫のようだ。
さて、どうしたもんか。
菅原が手を差しのべようとしたとき、その横を何事もないように日向の腕が過ぎていった。
掌には少し冷めた生地が握られている。
あからさまにびくついた影山に、日向はに、と笑ってやった。
太陽のように眩しい笑顔だ。
「ほら、もうへーきだから持てよ。
暫くすると全然暑くなくなんの。これ。」
無言でそれを握る影山の表情が、ようやくできた行動にたいしてか、ぱっとあかるくなった。
それを見て、日向も満足そうに頷く。
心地よく変化した雰囲気に、菅原はふぅんと、面白げに息をついた。
前言撤回。
最悪コンビなどではない。
わかり会えば、協力し会えば、二人は仲良くやっていけそうだ。
「いいか、最初慣れねぇときは菅原さんの転がし方見て、学んで、んで、実戦って思った方が気が楽だと思うぜ。
実際俺がそうだったし。
菅原さんの転がしかたすると、きれーにしかもばびゅって速くできっから、見ててもあきねーし、技術まで身に付くし一石二鳥だって!」
「こらこらー日向、それは誉めすぎだベー。」
「そんなことないっす!
俺もまだまだだなーって思いますっ」
びしりと姿勢をただしてこちらを見る日向の頭をわしゃわしゃかき混ぜてやると、心地良さそうに目を細めるもんだからいくらでも撫でてやりたくなってしまう。
そうして菅原は少しの間日向を構ってやっていた。
本当に少しの間だけだったのだ。
故に、影山へと視線を戻した後、彼は死ぬほど驚いた。
「え?...影山?」
「?__ッス。」
「.....もうそんなに作ったの?」
「熱くない生地、怖くないッス。」
ふん、と胸を張る影山に日向は口を大きく開けていた。
おい、顎が外れるべよ、とぱこんと下から押し込むように叩いてやれば日向は慌てたように顔をさする。
菅原の視界の先、影山の手元には綺麗に並べられた白いたまが18個、一目放した隙に出来上がっていたのだ。
これは、戦力になるかもしれないな...。
ごくりと唾を飲み込み、掌を握りしめたその時、そんな菅原の隣で日向が悔しげに意気揚々と声を張り上げた。
「てめー新人の癖にすぐ丸めかた身に付けやがって〜!!!
俺、立場ない!!
勝負だ影山!!」
「は!!?」
「よーいどん!!」
「う、!!?新人相手にせこいぞくそが!!!」
せこいせこいと呟くものの、止めはしないその手に、相当な負けず嫌いなのだなと菅原は苦笑する。
勝負事となったら黙っていられない西谷、田中が混ざって大乱闘となるのはそれから3分後のことであった。